>  今週のトピックス >  No.1286
とうとう起きた敵対的買収  王子製紙、北越製紙にTOB
●  成功すれば世界5位に
  日本の製造業でとうとう、敵対的TOB(株式公開買い付け)という手法を使った買収合戦が起きた。
  8月2日から製紙最大手の王子製紙が北越製紙に対してTOBを開始。買い付け価格は一株800円で、9月4日までに過半数の株式を取得し子会社する方針だ。成功すれば王子製紙は世界7位から5位に浮上するが、北越製紙の経営陣・従業員は猛反発。王子製紙のライバル日本製紙が北越の株を買ってTOBを邪魔するなど先行きは不透明だ。
  TOBとは経営権取得などを目的に、株式市場を通さずに不特定多数の株主から株式を買い集めること。これまで日本企業がTOBをかける場合、事前に被買収側の経営陣に同意を得る友好的なケースがほとんどだった。同意を得ずに強行する敵対的TOBは、日本では2000年に村上ファンドが昭栄という会社に仕掛けたのが最初とされる。
●  「敵対的」、製造業同士では初
  敵対的TOBでは、被買収側の経営陣が「会社を乗っ取られまい」と反発し、結局は目標の買い付け数に届かずに失敗することが多い。これまで米系投資ファンドのスティール・パートナーズがユシロ化学工業に、ドン・キホーテがオリジン東秀に仕掛けたのが有名だが、村上ファンドのケースも合わせてすべて失敗に終わっている。
  王子製紙の敵対的TOBが注目されているのは、東証一部上場で歴史のある製造業同士が買収合戦を繰り広げているからだ。業界最大手である王子製紙の時価総額は約7,000億円。これに対して北越製紙は業界6位で時価総額は1,000億円強と規模の差は圧倒的だ。世界規模の競争に打ち勝つには王子の傘下に入る方が利口だが、自主独立路線にこだわり徹底抗戦の姿勢を貫いている。今後、株主などを回ってTOBに応じないよう説得工作を進めるようだ。
●  世界との競争に再編は不可欠
  業界2位の日本製紙グループ本社(時価総額5,000億円弱)の動きも、今回の買収騒動を盛り上げている。王子製紙のTOBが失敗するよう、北越製紙の株式を市場で10%未満の範囲で取得すると発表。すでに目標に近い株式を購入したもようだ。北越製紙とゆるやかな提携を模索していくという。これでTOB成立は難しくなった。
  TOBの成否にかかわらず、今回の買収劇は日本の産業界が新たな時代に入ったことを意味する。マーケットが成熟した日本ではどの産業でも単独で世界企業と競争するのは難しい。業界を再編し世界に通用する競争力をつけなければならない。そのためには業界の秩序を壊すのもやむなしという考えを王子製紙は示した。今後同様の買収・再編劇が他業界で起こることは間違いないだろう。
(注)本稿は8月10日現在の情報に基づくものです。
2006.08.14
前のページにもどる
ページトップへ