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中小の事業承継支援を要望  来年度税制改正で経産省
●  相続時精算課税制度、親の年齢制限撤廃
  経済産業省・中小企業庁が、来年度税制改正で中小企業の事業承継を円滑に進めるための税制整備を要望するという報道があった。具体的には、(1)相続時精算課税制度の親の年齢制限撤廃、(2)議決権のない株式の相続税軽減の2点である。
  ここで相続時精算課税制度について改めて解説しよう。これは65歳以上の親から20歳以上の子どもである推定相続人に対する贈与について、贈与合計2,500万円までいったん非課税とする制度である。贈与合計が2,500万円を超える部分については、一律20%の贈与税を払う。贈与時には非課税であるが、親が亡くなって相続が発生すれば、その贈与はなかったものとして相続財産に贈与時の価額で持ち戻しされることになっている。そのため「贈与時には『いったん』非課税」という表現になる。
  一例として、今年65歳以上の親から20歳以上の子どもへ1,000万円贈与が行われ、さらに来年2,000万円贈与が行われる場合を考えてみよう。今年は贈与税0円、来年は贈与税100万円となる。将来、相続が発生したときには、この贈与はなかったものとして贈与時の価額で相続財産に持ち戻しされ、相続税から事前に払った贈与税100万円が差し引かれる。つまり、早くに親から子どもへ資産移転できたことになるのだ。
  ただし実務においては、相続時精算課税制度を使いたくても使えないことがしばしばあった。それは「65歳以上」という親の年齢制限が問題となるケースである。これは、中小企業で経営者が比較的若いうちに事業承継を行おうとする場合、大きな障壁となってしまう。
  そこで経済産業省・中小企業庁は、事業承継に限って親の年齢制限を撤廃し、子どもへの経営権移転を早いうちから進められるようにする方針を示したのである。
●  議決権のない株式の相続税を軽減
  もう一つの要望は、「議決権のない株式の相続税軽減」だ。中小企業の事業承継では、経営権の争いによって本業に支障をきたしたり、換金できない未公開株に高い相続税が発生するといった問題がよく見受けられる。今回の要望は、こうした事態に対応したものと考えられる。
  内容は、議決権のない株式の相続税評価額を通常の普通株式に対して20%軽減するというものだ。これによって資本と経営の分離を行い、議決権のある株式を事業承継者に集中させることで、いわゆる「お家騒動」を防ぐ狙いがあるといえる。
(1,000万円+2,000万円−2,500万円)×20%=100万円
(今村 仁、今村仁税理士事務所代表、税理士、宅地建物取引主任者、1級FP技能士)
2006.08.21
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