>  今週のトピックス >  No.1289
多様化する働き方、政府と企業に求められる課題は
●  労働経済白書、テーマは就業形態の多様化
  厚生労働省は8月8日、平成18年版労働経済白書を発表した。「就業形態の多様化と勤労者生活」をテーマとして、現状と背景を分析している。
  少子高齢化で労働力人口が減少していく中、社会が今後も持続的に発展していくためには、労働生産性と就業率の向上が重要だと指摘。労働政策の課題として、(1)公正な処遇が確保され、だれもが安心して働くことができる労働環境の整備、(2)格差の固定化を招かないための職業能力開発の充実、(3)自立した職業生活を営むための若年者の社会的支援、の三つを挙げている。
  今回は白書が着目している「就業形態の多様化」をふまえ、そこから見えてきた課題を検証したい。
●  非正規雇用者に公正な処遇を
  ここ数年、正社員といわれる正規の労働者数は減少している一方、契約社員・嘱託、派遣社員、パート・アルバイトなどの非正規労働者数が増加している。中には雇用契約期間が1年を超えたり、雇用期間を定めない契約で雇われているなど一般常用雇用者と変わらない者もいて、その数は年々増えている。
  こうした現状において、非正規労働者の処遇に対する不公平感が増しており、彼らに対する公正な処遇の確保と労働環境の整備が急務となっている。
◇労働意識や家庭事情の変化に応じたシステム
  働く側の意識変化に対応することも必要だ。就労意識が「就社」から「就職」へと変化する中で、長期雇用を前提とした従来の日本型雇用システムは、個人の能力や特性を重視した新しいかたちへと変わっていくことが求められる。評価システムも、円滑な共同作業で高い成果を要求する性質のものではなく、一人ひとりが個性と実力を存分に発揮できるものへと改善されるべきだろう。
  高齢化が進む中、労働者個々の家庭事情に配慮しながら仕事と生活の両立を推進していくことも大切である。
◇若年層の正規雇用を促進
  若年層ではニート、フリーターのほか、無職の者やアルバイトなどの非正規雇用者が多い。正規雇用を促進するには本人への支援策はもちろんだが、企業に採用基準の見直しを求めることも必要だ。例えばボランティアの経験を評価に反映させたり、採用年齢を引き上げるなどといった方策が考えられる。
◇賃金格差の固定化を防ぐ
  働き方に違いが生じてくると、当然に賃金格差も生まれる。これは労働意欲を低下させることになりかねない。賃金格差の固定化を防ぐためには、職業能力開発を充実させて水準を高め、仕事に取り組む意欲を継続的に引き出すことが重要となってくる。
●  政府と企業に必要な努力
  どのような働き方を選んでも労働意欲を持ち続けられるようにするためには、職業能力の開発や労働環境の整備が必要となる。政府は現在、有期労働契約をめぐるルールの明確化や社会保険の適用拡大など、異なる就業形態間における処遇の均衡確保に向けて法的整備を含めた取り組みをしている。企業においても、正規雇用への転換制度や短時間正社員制度などの導入が望まれる。
  政府と企業のこうした努力がなければ、わが国社会はグローバル化に伴う市場競争や産業構造の変化に今後対応していくことができないであろう。
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.08.21
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