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税務調査で「カラ出張」を疑われないために
●  出張旅費は税務調査のチェック項目
  架空の出張をつくり上げる、いわゆる「カラ出張」がしばしば社会問題となっている。自治体職員がカラ出張の交通費や宿泊費相当分を裏金としてプールするケースや、公共放送の社員が200回以上ものカラ出張を繰り返して多大な損害を与えた事件などが発覚している。役員や社員の出張旅費や宿泊費は非課税となるだけに、カラ出張は裏金づくりなどに利用されることが多い。
  適切な額で定められた出張旅費規程に基づいて支給される交通費・宿泊費・日当は、実費精算でなくてもかまわない。出張先の地域別に一定額の旅費を支給する旨を定めておけば、出張者は記録を残したりする必要もない。また、出張に伴い使用した地下鉄やタクシーなどの交通費は領収書をもらえないケースも多い。要するに、出張旅費規程に従って出張旅費を支払うだけでは、出張したことを証明する証拠が乏しいということだ。
  こうした点が、出張旅費の名目で経費の水増しや裏金づくりを行う不祥事の温床となる。
  だから税務調査においても、出張旅費は必ずチェックされる項目の一つとなるのだ。
●  トラブル防止には客観的な資料の保存を
  税務調査において無用なトラブルを避けるためには、出張したことを立証する資料を残しておくことが重要である。出張旅費規定に基づいて地域ごとに一定額を支給したとしても、これで出張したことが証明されるわけではない。出張報告書は架空で作成することが可能なので、あてにならないからだ。
  出張報告書による出張日とタイムカードを突き合わせるなどすれば、社員個人によるカラ出張は発覚しやすいだろう。しかし会社ぐるみでカラ出張を仕組む場合も考えられる。そうなるとつじつまあわせもお手の物だ。つまり出張報告書だけでは、調査当局の疑念を消し去ることはできないのである。
  従って「確かに出張した」ということを証明するためには、客観的な資料が必要になる。例えば航空運賃や鉄道料金、ホテルの宿泊費などを実費精算として領収書が残るようにする方法がある。実費精算でなくとも、新幹線の乗車券や飛行機の搭乗券のコピーを出張した社員から入手するなどの管理方法も考えられる。出張した訪問先を明らかにできる名刺やカタログなどの関連資料を保存しておくことも効果的だ。
●  カラ出張は重加算税の対象
  調査で「カラ出張」と判定されれば、支給した出張旅費相当額が社員に対する賞与として源泉徴収の対象となり、仮装・隠ぺいによる重加算税が課される可能性が高い。会社ぐるみの裏金づくりであれば、確実に重加算税の対象となる。また、出張の名目で取引先とゴルフに行った場合は、宿泊費や交通費等相当額が交際費課税の対象となる。
  なお役員や社員が個人でカラ出張を行って出張旅費などを横領した場合、すでにその返還を求めているならば、税務上は問題とはならない。
  出張旅費は、実費精算でなくでも非課税となるだけに、税務調査において必ずチェックされる項目の一つである。出張旅費規程や出張報告書だけでなく、出張を客観的に証明できる資料を保存しておくなど、調査を見越した十分な管理が求められよう。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.08.21
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