>  今週のトピックス >  No.1291
企業の育児支援、法定外分野で対応分かれる
●  育児休業規程の設置状況、変化みられず
  平成16年度の育児休業取得者は女性が72.3%、男性が0.5%だったことが厚生労働省の調査で明らかになった。少子化の進行や求人ニーズの高まりによって育児支援に関する法整備や企業努力が進んでいるが、女性の育児休業取得率が向上している反面、男性の割合は昨年より低下している。
  今年4月には育児・介護休業法が改正され、育児休業期間や勤務時間短縮期間が延長された。同法は「育児休業を申し出た従業員に対してこれを拒絶することはできない」としているものの、規程の設置自体は努力義務にとどまっている。そのため、育児休業制度の規程がある事業所は61.6%と、法改正前の61.4%(平成14年度)から変化がみられない。
  ただし、従業員に対して育児休業に関する事項を告知することは、各事業所に義務付けられている。規程が整備されている割合は500人以上の企業では99.9%、100〜499人で95.5%におよぶ。
●  休業期間は法令並みの「1歳6カ月まで」
  法律が定める育児休業期間は原則1年だが、事情によってはさらに半年間延長できる。育児休業期間は、法令に準じて「子が1歳6カ月になるまで」とする事業所が約8割。法令以上の期間を定める企業は少なく、「1歳6カ月を超え2歳未満」が3.0%、「2歳〜3歳未満」が6.1%、「3歳以上」が1.0%という状況だ。
  法改正により、今年度から正社員以外の有期契約社員も育児休業の取得対象となった。その旨を自社の規定に明記している企業は95.9%に上っており、おおむね浸透しているといえるだろう。
  一方、育児休業取得者の処遇についてみると、法律では不利益な扱いを禁ずるのみで具体的な定めはない。
  育児休業中も「定期昇給時期に昇給する」事業所は約4分の1あるが、「復職後に昇給する」(23.7%)、「休業期間中の定期昇給は行わずに復職後の定期昇給に持ち越す」(51.9%)と、対応は分かれている。
  賞与算定において、育児休業期間も対象期間に含める例は少ない。「出勤日または休業期間に応じて支給する」が62.7%、「賞与の算定の際の休業期間の取扱いは特に決めていない」が24.1%となっている。
  退職金算定については、育児休業期間を「勤続年数に全く算入しない」が36.7%、次いで「取り扱いは特に決めていない」が23.9%だ。反対に「休業期間も勤続年数に算入する」(29.3%)、「休業期間も一定程度出勤したものとみなして勤続年数に算入する」(5.5%)と、従業員に有利な取り扱いをする事業所は少数派である。
●  原職への復帰が6割超
  休業取得後、スムーズに復職できるよう定めている事業所は8割を超える。「原則として原職または原職相当職に復帰する」が66.6%、「本人の希望を考慮し会社が決定する」が15.4%だ。
  休業中は会社とのつながりが薄れて不安が募る時期でもあるが、時間が空けばスキルアップの時間を捻出することもできる。休業者の職業スキル向上について何らかの措置を講じている事業所は24.9%だ。規模が大きいほどこの割合も高くなる傾向にある。内容をみると「休業中の情報提供(社内報、職場・仕事に関する情報)」が69.7%、「職場復帰のための講習」が28.5%(以上、複数回答)となっており、育児支援に熱心な企業における配慮がうかがえる。
出所:厚生労働省「平成17年度女性雇用管理基本調査」
(可児 俊信、ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.08.28
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