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郵便局、強力な販売実績で巨大リテールバンクへ
  郵政公社は今後民営化され、郵便貯金事業は郵便貯金銀行に引き継がれることが決まっている。メガバンク、地銀、信金、農協などさまざまな金融機関が立ち並び、すでにオーバーバンキングといわれる日本の市場。その中で郵貯銀行が生き残っていくためには、従来の枠を脱し、新たなビジネスモデルを確立しなければならない。
  その核となると考えられるのは、金融商品を販売することで手数料を得るフィービジネスだ。特に個人顧客への資産運用アドバイスを通じて貯金以外の金融商品を勧める業務、具体的には「個人向け国債」や「投資信託」の販売が中心となる。
  今回はその販売実績を通して、郵便局の変化と販売力を検証したい。
●  それは個人向け国債から始まった―販売額の1割以上が郵便局の実績
  個人向け国債が初めて発売されたのは平成15年。変動金利型で10年満期の商品(以下、「変動10年」)として販売された。当初はそれほど伸びなかったが、金利上昇を背景に今や1兆円を売り上げる人気商品となった。今年からは固定金利型の5年満期の商品(固定5年)も発売されている。
  郵便局の販売実績(表参照)には注目すべきものがある。
  • 変動10年の販売累計額は2兆円を突破している。
  • 今年4月に発行された変動10年(第14回債)と固定5年(第2回債)の販売実績合計は、3,000億円に迫る勢い。
  • 郵便局の販売実績は概ね個人向け国債発行額全体の10%以上に達している。
【個人向け国債の発行額と郵便局の販売実績(単位:億円)】
■変動10年
  全体発行額 郵便局販売額   全体発行額 郵便局販売額
第1回債 3,885 499 第8回債 18,652 2,484
第2回債 3,485 746 第9回債 17,647 2,436
第3回債 2,802 588 第10回債 23,373 1,990
第4回債 9,431 1,659 第11回債 16,423 2,484
第5回債 13,951 995 第12回債 13,628 2,483
第6回債 14,184 1,244 第13回債 8,001 1,488
第7回債 17,726 1,990 第14回債 8,285 1,491
■固定5年
  全体発行額 郵便局販売額
第1回債 11,284 497
第2回債 9,883 1,490
●  着実な実績を挙げる投資信託販売―商品数・取り扱い局も拡大
  郵便局は昨年10月、投資信託の販売を開始した。元本保証ではない金融商品を扱うのは初めてのことである。当初は3商品だけであったが、6月以降は8商品まで広がった。取り扱い局も18年度末には1,153局まで拡大される予定である。
  郵便局の投資信託販売実績では、次の2点に着目したい。
  • 販売額累計は2,700億円を突破。年間の販売額が3,000億円を突破するのは確実である。
  • 今年度に入り、コンスタントに300億円超の販売実績を挙げている。
【郵便局の投資信託販売実績(単位:億円)】
  販売実績   販売実績
17年10月 94 18年3月 250
17年11月 80 18年4月 413
17年12月 231 18年5月 335
18年1月 265 18年6月 389
18年2月 273 18年7月 376
●  「安心・安全」からの脱却
  郵便局は今、従来の「安心・安全」というイメージから脱却するのを覚悟で、強力なリテールバンクへ変貌を遂げつつある。ほかの金融機関を脅かす存在となるのも、そう遠い話ではないだろう。
2006.08.28
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