>  今週のトピックス >  No.1295
国民医療費、65歳以上が全体の半分を占める
●  増加率は前年比1.8%増にとどまる
  平成16年度の国民医療費(※)の総額は32兆1,111億円で、前年度より1.8%増加したことが厚生労働省の調査で分かった。国民医療費は、昭和30〜50年代はじめまでは毎年おおむね2ケタの伸びを示したものの、昭和60年代の増加率はおよそ6%台、平成に入ってからは5%前後と、次第に伸びが鈍っている。その後、医療保険の自己負担割合が増加し、また公的介護保険創設によって介護費用分が切り出されたことによって、ここ2年は数パーセントの伸び率に抑えられてきた。
  保険制度別では、老人保健からの給付が支出の3割を占めているのが特徴だ。被用者保険(健康保険、共済組合、船員保険)7.2兆円、国民健康保険7.1兆円、自己負担部分4.9兆円、公費負担1.8兆円に比べ、老人保健は10.5兆円と突出している。
  財源の最終負担者別にみると、被用者保険の事業主が32兆円のうち、6.6兆円を拠出している。この一部は老人保健に拠出されている。国民が負担している14.3兆円のうち、9.4兆円は保険料(健康保険、共済組合、国民健康保険など)という形で、残りの4.9兆円は医療機関や調剤薬局の窓口での自己負担額だ。それ以外は公費、すなわち税金で11.1兆円に上る。その大部分は老人保健と国民健康保険に投入されている。
  老人保健と国民健康保険に投入される多額の公費が財政を圧迫する要因の一つといわれているが、高齢者の医療費は現状どのようになっているのだろうか。
●  負担増は限界、疾病予防へ転換
  65歳以上の人口は国民の20%であるが、医療費では全体の半分を占めている。国民医療費総額32兆円のうち、65歳以上の患者が16.4兆円を使い、それより若い世代が残りの15.7兆円を使っているのだ。一人あたり医療費をみても、65歳未満が約15万円なのに対して、65歳以上は約66万円と実に4倍以上の額である。
  今年の国会にて、新しい高齢者医療保険制度の創設と高齢者の自己負担増が決まった。また生活習慣病予防に向けて、保険者への健診・健診データ管理・保健指導などの義務も課せられた。厚生労働省は国民の自己負担増や企業への負担増はそろそろ限界とみて、疾病予防を前面に出してきたとみられる。これまでは医療費をだれが負担するかということが焦点になっていたが、病気にならないことは究極の医療費削減手段であり、ようやく本腰が入ったといえるではないか。
(※) 国民医療費とは、医療機関等における傷病の治療に要する費用を推計したもの。含まれるものは、医療機関での医療費(自己負担部分を含む)、薬局での調剤費のうち処方箋に基づく部分、訪問看護での療養費などである。含まれないものは、正常な出産費用、保険のきかない差額ベッドや歯科材料費、検診や人間ドックなど予防に関する費用、医療ではない介護費用や障害者の補助具費用、薬局での通常の買薬など。
出所:厚生労働省「平成16年度国民医療費の概況」
(可児 俊信、ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.09.04
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