>  今週のトピックス >  No.1296
固定資産の税負担を軽減するには
●  設備投資額の全額損金算入が論点に
  2007年度税制改正に向けて、設備投資など固定資産の取得価額全額を減価償却により損金算入できるようにすることが検討されている。
  現在、減価償却は取得価額の5%までしか認められていないが、改正が実現すれば減価償却費が増えることになる。設備投資額が増えれば、5%といえども、結構な金額になるだろう。
  税制改正はまだ論点整理の段階であるため、今のところ実現は不透明である。11月をめどに自民党税制調査会で本格的に論議される予定だ。
●  こんな減価償却もある
  ところで現在の税法でも、普通償却以外に次のような償却が認められている。
(1)増加償却
  例えば工場をフル稼働させているような場合、当然機械の損耗も激しくなる。従って通常より多くの減価償却費を計上することを税務署は認めている。
  追加計上できる減価償却費は「普通償却費×1日当たりの超過使用時間×3.5%」。機械の種類ごとに通常の使用時間が税務署によって定められているので、それを越えた時間を測って計算する。
  ただし、追加計上分の償却費が普通償却費の10%以上でなければ計上できない。
(2)陳腐化償却・耐用年数の短縮
  新製品の発売や不十分な修理などにより固定資産が著しく陳腐化した場合には、耐用年数の短縮や、陳腐化した部分の減価償却費の追加計上を税務署に申請できる。
  このほか、特別償却※1などの方法がある。
●  税額控除も活用を
  先に紹介した増加償却・陳腐化償却・耐用年数の短縮は、結局のところ将来の減価償却費の先取りに過ぎない。当期だけを見れば節税になるが、長期的に計上できる減価償却費は変わらないのだ。
  これとは別に、取得した固定資産の取得価額の一定率を法人税から控除できる「税額控除」という方法がある。この方法であれば、減価償却費を通常通り計上した上で、さらに一定額を法人税額から控除できるのだから、確かに税負担軽減になる。
  税額控除にはさまざまな種類があるが、有名なものとして通称「中小企業投資促進税制」がある。これは160万円以上の機械や70万円以上の一定のソフトウエアを取得した場合に認められる制度だ。
  新たに固定資産を取得した場合には、このような税額控除が使えないかぜひ検討してほしい。なお、新たにリースを組んだときにも税額控除は適用できる。
●  リースなら「情報基盤強化税制」に注目
  税額控除はどの法人でも使えるわけではない。通常は資本金額が一定以下の法人が対象になる。リースでも原則として同様だ。
  だがリースの場合、この基準に当てはまらなくても税額控除が使える方法があるので紹介したい。今年の税制改正で新設された「情報基盤強化税制」の活用だ。これによると、リース税額控除を適用できるのは「青色申告書を提出する資本金1億円以下の法人」とされている。資本金1億円超の法人では適用できないということだ。
  しかし税務上売買取引とみなされるようにリースを組むと、形式上は「リース」であっても、税務上は「売買取引」となる。
  ここで先の「情報基盤強化税制」の内容に戻ると、売買取引における税額控除の適用要件には資本金制限がない※2。従って、資本金1億円超の法人でも税額控除を適用することができることになるのだ※3
  なお実際の適用にあたっては税理士などに相談のうえ、慎重に検討してほしい。
※1 通常の減価償却とは別枠で減価償却できる制度。一定の要件を満たすことが必要。
※2 ただし取得価額が3,000万円以上の場合に限る。
※3 法人税法基本通達12の、5-2-15。
(村田 直、マネーコンシェルジュ・今村仁税理士事務所)
2006.09.04
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