>  今週のトピックス >  No.1299
失業期間の長期化、労働条件も関係
●  1年以上の長期失業者は4回以上転職
  日本の就業状況は明らかに好転している。2002年では完全失業者数359万人、完全失業率5.4%であったが、今年2月では同277万人、4.1%に改善した。だが一方で1年以上に及ぶ長期失業者も100万人以上存在しており(2005年1〜3月期)、失業者が二層化していることが独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査で分かった。
  この調査の対象となった長期失業者534名は、何度もの転職を通じて最終的に長期失業状態となっている。学校卒業後、大部分は正社員として就職している(87.2%)が、最初の就職先での勤務年数は平均で8.16年だ。30歳代では約4年、40歳代で8年弱、50歳代で約11年と、年齢が若いほど最初の勤務年数は長くない。男性だけの平均値でも9年強だ。
  その後の転職回数は4.84回と多めである。30歳代で3.4回、40歳代で4.2回、50歳代で6.8回だ。50歳代が極端に多いのは、リストラが盛んになった1990年代に40歳代であり、その影響が大きいためであろう。
●  転職するにつれ企業規模は小さくなる
  転職した勤務先の仕事内容をみると「同じ仕事をしてきた」が23.4%、「関連性のある仕事をしてきた」が45.7%であり、7割弱の人はある程度一貫性のあるキャリアのようだ。「関係のない仕事をしてきた」は27.8%である。
  しかし転職を重ねるにつれ、勤務先の企業規模は小さくなっているようだ。最も長く勤めた企業規模が1,000名以上である長期失業者は29.2%、100〜999名が35.8%、100名未満が35.0%であるのに対し、失業の直前に勤めた企業は1,000名以上が16.2%、100〜999名が27.4%、100名未満が56.3%と規模が小さくなっている。
  業種別では、最も長く勤めた企業だと製造業、その次にサービス業が多いが、失業直前に勤めた企業では逆にサービス業が最も多く、次に製造業となっている。
  雇用形態も変わっていく。最も長く勤めた企業で正社員だった割合は89.8%だが、失業直前の企業では64.3%と減っており、代わって契約社員、パート・アルバイトが増えている。
●  以前の労働条件にこだわりすぎると再就職が困難に
  失業直前の企業を退職した理由(3つまで回答)は、「人間関係」「健康を損ねた」「労働時間」など職場に問題があるのが52.8%、「仕事が合わない」「将来性がない」「給与に不満」といった職場への不満が39.8%、「解雇・退職強要」「希望退職・早期退職制度」などリストラが34.4%、「倒産・廃業」「定年・契約満了」が19.4%などである。職場への問題、職場への不満が退職の理由となっている模様だ。
  転職を重ねると、以前の職場と労働条件、企業の質を比べがちになることが、新たな退職につながる原因のひとつではないか。そこにこだわりすぎると再就職がますます厳しくなり、失業の長期化という悪循環に陥ってしまうようだ。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「長期失業者の求職活動と就業意識」
(可児 俊信、ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.09.11
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