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王子製紙の敵対的TOB、不成立に
●  株式市場では高評価だった
  王子製紙の北越製紙に対するTOB(株式公開買い付け)が不成立に終わり、国内製造業同士では初めての敵対的買収戦が幕を閉じた。株式市場では高評価な買収提案が、同業他社の横やりで失敗に終わったといえる。TOB不成立で各社が乱売合戦に再び突入するのは確実で、2〜3年以内に次の再編が起こる可能性がある。
  今回のTOBは株式市場での評価が高かった。王子製紙がTOBの実施を発表した翌日の7月24日は再編への期待から北越製紙の株価だけでなく、王子製紙、日本製紙グループ本社、大王製紙、三菱製紙の株価が急騰した。
  国内製紙市場は需要が頭打ちで慢性的な供給過剰状態が続く。トイレットペーパーやティッシュペーパーが常に安売りの対象となるのはこのためで、紙市況は軟調に推移している。増産を表明している北越製紙を王子製紙が管理下に置けば、需給は締まり、製紙業全体の収益改善が見込める。そんな思惑から製紙各社の株価は上昇したようだ。
●  同業他社が阻止に回る
  それでもTOBが不成立に終わったのは、北越製紙の経営陣・従業員の反発もあるが、業界他社が北越支援に回ったからといえる。業界2位の日本製紙はTOB阻止を目的として8月上旬までに北越製紙株を9%弱市場で買い付けた。業界3位の大王製紙は王子製紙の北越製紙買収が独占禁止法に違反するとした上申書を公正取引委員会に提出し、横やりを入れた。北越製紙の取引先、取引銀行も一斉に北越支持に回った。
  TOBが不成立になったため、製紙業界は泥沼の増産合戦が避けられない情勢だ。2007年から2008年にかけて日本製紙と大王製紙は大型の製紙設備の導入を計画。北越製紙も主力の新潟工場に新型抄紙機を新設する。さらに北越製紙買収を断念した王子製紙が最新鋭設備の導入に踏み切る見込みで、現在緩んでいる紙の需給がさらに緩みそうだ。消費者にとっては紙の値下がりにつながるので決して悪い話ではないが、製紙各社は消耗戦に突入する。
●  次の再編が起こるのは確実
  結局、王子製紙のTOBを阻止したことで、長い目で見れば全社がさらに厳しい競走環境にさらされる。収益が悪化すれば、各社の株価は下落が避けられない。株価下落は会社の値段(時価総額)が下がることを意味し、買収されるリスクが高まることを意味する。結局2〜3年後にまた買収合戦に突入する可能性が残るわけだ。
  今回のTOBの過程で三菱商事と日本製紙が北越製紙の株式を大量に保有することになった。三菱商事の仲介で北越製紙、日本製紙、さらには三菱グループの三菱製紙が何らかの形で提携していく可能性もある。こうした動きからも目が離せなくなりそうだ。
2006.09.11
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