>  今週のトピックス >  No.1305
地域への参加と働き方見直しを提言  厚生労働白書
●  「支え合いの循環」を実感できる社会へ
  厚生労働省は9月8日、平成18年版厚生労働白書を発表した。テーマは『「持続可能な社会保障制度と支え合いの循環〜「地域」への参加と「働き方」の見直し〜」。昨年度の「地域とともに支えるこれからの社会保障」にもみられた「地域の重要性」に加えて、今年は「働き方」の見直しについても強く提言する内容となっている。
  白書は、家族や地域のために活用できる時間を持てるよう働き方を見直すと同時に、一人ひとりが意欲に応じて地域の活動に参加し、その結果として「支え合いの循環」を実感できる社会の実現を求めている。
  具体的な取り組みとしては、フリーター、ニートとよばれる若者の支援や障害者の自立促進、質の高い医療の確保、少子化対策などを挙げている。特に少子化対策については、急速な人口減少が国や社会の存立基盤にかかわる問題であることから、総合的な取り組みが重要であるとしている。
●  企業と地域社会の役割を指摘
  白書は少子化の要因の一つとして、30代を中心とした育児世代の長時間労働を挙げている。
  子育て期にある30代男性の約4人に1人は週60時間以上の長時間労働をしており、その割合も増加傾向にある。厚生労働省統計情報部「21世紀成年者縦断調査」によれば、長時間労働を見直した夫婦には、より多く子どもが生まれる結果となっている。このことからも、労働者の仕事と生活の調和を実現するために働き方の見直しがますます重要な課題であるとし、働きやすい職場環境の整備を図っていくことは企業の社会的責任であると述べている。
  具体的には、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の観点から、希望する者すべてが育児休業などを取得できるよう、女性だけでなく男性の育児休業の取得促進に努めることが必要と指摘。さらに、育児期の男性の長時間労働を減らし、家庭でしっかりと子どもに向き合う時間が持てるような環境づくりに努めることを提言している。
  少子化の流れを変えるためには、人々が安心して子どもを産み育てることができる環境を整備することが大切だ。従来から進めてきた、仕事と家庭の両立支援策や保育サービスの充実に加えて、雇用環境の整備や地域における子育て支援の拠点整備など、働いている・いないにかかわらず、すべての子どもと親を支える施策展開も必要である。民間の力を活用して子どもの見守りや親同士の交流を行うなど、地域社会全体で支え合う取り組みが求められるだろう。
●  地域の自主性と労働環境の変革がカギ
  そのほか、「職場・家族・地域の支え合いの循環」も提唱されている。これは意欲のある高齢者が働ける職場を整備することで社会保障の支え手を増やし、あわせて地域のボランティアらが家庭での子育てや介護などを助ける仕組みのことだ。国民同士が支え合う自助の活動が広がることで、年金、医療、介護など公的社会保障制度への過度な負担を避ける効果を期待している。
  今後、地域住民の自主的な動きが活発になり、また労働者・経営者の意識変革によって仕事と生活を調和させる働き方が実現すれば、これまでにない「支え合いの循環」が生まれ、人々の生活にいっそうの納得や満足を与えることにつながるであろう。
出所:厚生労働省 「平成18年版 厚生労働白書」
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.09.19
前のページにもどる
ページトップへ