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電子申告促進へ向け、利便性向上を検討  国税庁
●  オンライン利用率、2010年度に向け50%に
  国税電子申告・納付システム(e-Tax)の普及が進まないなか、国税庁は利用促進に向けた取り組みを公表した。これまで必須だった第三者作成の添付書類の送付を不要とするほか、電子署名を省略することなどが検討されている。
  e-Taxの利用件数は年々増えてはいるものの、今年7月末現在で41万2,691件、利用率はわずか0.3%にすぎない。
  こうした状況を受けて国税庁は、利用率を2010年度までに50%(2,859万件)とする目標を掲げた。まず2006年度は2%(110万件)、その後は2007年度3%(167万件)、2008年度8%(456万件)、2009年度22%(1,246万件)と段階的にアップさせていく。
  対象となるのは国税関係各手続きのうち、所得税や法人税等の申告を始め48種類となる。
●  税理士関与なら添付書類不要、電子証明も省略へ
  具体的な措置として、以下の場合に第三者作成の添付書類の送付を不要とする方針だ。

(1)第三者の電子署名を付した上でオンライン送信する場合(源泉徴収票等については2006年度実施予定)
(2)税理士による確認を経てスキャナーを利用してオンライン送信する場合(2007年実施を目指す)

  さらに、税理士関与の納税者について、税理士に添付書類の保管義務を課すことによって、添付書類の送付を不要にすることについても検討する。
  手間がかかる電子署名も簡便化する。例えば給与の所得税徴収高計算書を送信する時はID・パスワードのみで認証し、納税者本人の電子署名を省略する(※)。そのほかの申告書などを税理士が代理送信する際にも、一定の要件のもとに納税者本人の電子署名を省略できるようにする。
  e-Taxの利用可能時間も変える。これまでだと、確定申告期間は平日が9時〜23時、土日は9時〜21時までとなっていたが、2006年分以降の所得税確定申告期間から24時間受付を目指す。
  2006年度はe-Taxを利用した還付申告の処理期間を通常の6週間程度から3週間に短縮する優遇措置や、すぐにe-Taxを利用できるソフトをダウンロードできる環境も整える予定。さらに2007年度には、国税庁ホームページの申告書作成コーナーから直接電子申告できるようにすることも検討材料に挙げられている。
●  最後の切り札は「電子申告税額控除」か
  取り組みは多彩だが、現在0.3%にすぎない利用率を50%まで引き上げることは容易ではない。納税者は、e-Taxのメリットを相当に感じないかぎり「手間や時間がかかる」と敬遠し、そう簡単には手を出さないだろう。そうなれば、法改正は必要となるが「電子申告税額控除」といった直接的なメリットが必要なのではないか。
  韓国では、電子申告システムによる納付比率が法人税約97%、個人所得税約75%、付加価値税約72%と高水準である。このシステムの利用者には、法人税と所得税で各2万ウォン(約2,400円)、付加価値税で1万ウォン(約1,200円)の割引があるのだ。米国は1996年から電子納税システム(EFTPS)を導入済みで、大手企業にはこの利用が義務付けられている。シンガポールでは税申告の68%が電子版となっており、数年前までは電子申告をした者に抽選で最高賞金約140万円の当たるくじを与えたり、電子申告の方法を広めた者にはこのくじを増やすといった施策が採用されていたという。
  海外の事例をみると、「アメ」にしろ「ムチ」にしろ、インセンティブ(奨励策)付与が利用促進を図るうえで有効に働いていることを示している。
  日本におけるe-Tax利用促進の最後の切り札は、「電子申告税額控除」の導入となるだろうか。
2006年度実施予定。初期登録時のみ電子署名が必要
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.09.19
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