>  今週のトピックス >  No.1307
離婚件数の減少、本当の要因は?
●  4年連続で離婚件数が減少
  平成17年の離婚件数は前年を下回り、4年連続で減少傾向にあることが厚生労働省の調査で分かった。
  昨年の離婚件数は26万1,917件で、16年の27万0,804件と比べると1,000件近く減っている。下にあるグラフの青い部分は平成3年以降の年間離婚件数の推移を示したものだ。平成3年から14年までは毎年増加してきたが、15年以降は減少に転じている。
  離婚が減った理由は明らかではないが、三つの解釈が考えられる。まず平成19年4月から離婚時の厚生年金分割制度が施行されることを見越して離婚が先延ばしにされ、目先の件数が減少しているという解釈である。次に挙げられるのは、昨今の景気回復を先取りしているというものだ。離婚件数は景気の先行指数であり、これまでも景気と反比例してきた。最後の三つ目は、間もなく退職を迎える団塊世代の夫が退職金を受け取るまで、妻が熟年離婚を待っているという推察である。
●  年金分割の施行待ちが減少の原因か
  だが「景気回復を先取りして離婚件数が減少した」という解釈は根拠が弱いうえ、急激な離婚件数の減少を説明しきれない。「団塊世代の退職金待ち」ももっともらしいが、現在夫の年齢が50歳代後半である妻に限られる現象であり、離婚件数全体の減少は説明できない。
  よって、「離婚分割制度の施行待ち」という解釈が有力となる。事実、年金改革をめぐる社会保障審議会の検討内容は平成14年暮れごろから新聞紙上で伝えられようになり、それと同時に離婚時の年金分割制度も話題に上っていたので、つじつまが合う。
  グラフの平成15〜17年の緑色部分は、離婚分割制度を期待して離婚を先延ばししたため、減少したとみられる離婚件数だ。平成3年からの件数の伸びをそのまま延長して算出した予想の件数と実際件数の差分である。平成18年の黄色部分は、実際の離婚件数の予測である。
●  平成19年に離婚件数が急増する可能性あり
  平成15年から18年の間の先延ばしされた離婚件数はグラフの緑色部分にあたる。これを前提にすると、平成19年以降まで約20万件の離婚がダムの水のようにせき止められていることになる。仮に、この離婚が平成19年にすべて実現すれば、その年の予測である34万件に潜在件数の20万件が加わって合計54万件となる。前年より20万件以上離婚が急増する計算だ。
  さらにその後も、年金分割により経済的な不安が薄らげば、離婚件数は一層増えていくと考えることができる。
【図表 離婚件数と将来予測】
注:グラフは筆者作成
出所:厚生労働省「平成17年人口動態統計の概況」
(可児 俊信、ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.09.25
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