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ユーロ、ドルと双璧の通貨として新たな局面へ
  最近、ユーロが円、米ドル(以下ドル)に対して高値を更新している。これは、ユーロという通貨が、98年の導入以来新たな局面を迎えている可能性の表れだ。最近のユーロを取り巻く現状について考えてみたい。
●  為替相場はどうなっているか  ――ユーロ高が顕著に
  ユーロの対円、対ドルの動向を表したものが以下のグラフである。
【図表 ユーロの対円・対ドル動向】
  ユーロ/円(赤線)を見れば明らかなように、2000年12月以降、円安ユーロ高の傾向が顕著に表れている。日本経済の回復傾向が顕著に表れ始めた2003年以降も、ユーロは対円において一貫してユーロ高(円安)傾向を表していることから、円安要因というよりは、ユーロ自体の要因によりユーロ高を作り出していると考えられる。日本経済がかなり力強く回復している中、今年9月に入りユーロが導入後初の対円で150円を突破したことはそのことを裏付けるものであろう。
  同様にドルに対してもユーロ高傾であり、最近では、対ドル(1ドルを何ユーロで交換できるか)も0.8付近に落ち着きつつある。特に02年4月以降の対ドルでユーロ高の傾向は、グラフ1のドル/ユーロ(青線)で分かるであろう。
●  ユーロの政策金利はどうなっているか  ――金利格差を上回るユーロ高要因の発生
  ユーロ高の要因の一つとして考えられるのは、ユーロが他の通貨、特にドルに対して高金利通貨になっているのではないかということである。ところが実際は、ドルとの金利差に関して言えば、現在のユーロの政策金利は6月15日に0.25%の利上げが実施されて2.75%となっており、ドルの政策金利の5%を大きく下回っている。ECB(ヨーロッパ中央銀行)・トリシエ総裁の見解によれば、今後も小刻みに利上げを継続するというよりは、経済指標を見ながらインフレは抑制しつつも引き続き金融緩和政策を継続していく可能性が高い。つまり今後当面は、ドルの政策金利の方がユーロによりも高金利であるという現状が変わらない可能性が大きいと思われる。にもかかわらず、ドル安ユーロ高の状態となっていることが注目すべき点なのだ。言い換えれば、金利格差を上回る要因(ユーロの将来性、もしくはドルの将来性への不安など)が発生していると考えられる。
  いずれにせよ、市場はユーロとドルの魅力を比較した場合に「ユーロ>ドル」と判断しているといえるのではないであろうか。
●  国際的な位置付けはどうか  ――米国が混迷するほどユーロの信頼高まる
  最近の中東情勢においては、米国の外交戦略が手詰まり感のある中で、欧州は積極的な仲介役として登場し、国際的な位置付けが一層高まっている。中国政府などもEUとの貿易を拡大させており、その点からもEUの国際的な存在は以前にも増して向上しているといえる。
  その背景として、世界唯一の大国である米国への牽制機能としての役割が期待されているEU、そしてその通貨であるユーロという姿が見え隠れしているのも事実であろう。もう一つの巨大な経済域であるアジア圏内の通貨統合構想は、概念的には存在するものの実現にはほど遠い。こうした現状においてドルに対抗できる唯一の通貨といえるユーロの国際的な位置付けは、米国の外交政策が混迷を深めれば深めるほど、今後も一層高まる可能性が高い。
  現在のドル・ユーロの為替相場動向に大きな影響を及ぼしている要因としては、ユーロ金利の魅力というよりも政治的な要因の影響が大きいのではないであろうか。そうだとすると、ユーロという通貨は発足当初からの目標であったドルの対抗通貨として国際的な地位を着実に獲得しており、ユーロが新たな局面を迎えつつあるといえるのかもしれない。
2006.09.25
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