>  今週のトピックス >  No.1314
耐震改修促進税制、整備遅れでほとんど適用受けられず
●  補助制度を設けている区域のみ対象
  2006年度税制改正で創設された耐震改修促進税制は、住宅の耐震化率を今後10年間で90%まで引き上げることを目標としている。同税制の適用が受けられるのは、自治体が耐震改修についての補助制度を設けた一定の計画区域に限定されている。
  ところが自治体による耐震改修促進計画の整備が遅れていることから、せっかく耐震改修しても、税制の適用が受けられない事態となるおそれがあり、問題となっている。
  国土交通省のまとめによると、今年7月1日現在で耐震改修促進計画を策定し、耐震改修に対する補助制度を設けている市区町村は、戸建住宅で全体の24.3%(448自治体)、マンションに至ってはわずか3.7%(69自治体)にすぎない。今後、計画を策定する予定がある市区町村は22.8%(420自治体)あるものの、現在のところはほとんどの納税者が耐震改修促進税制の恩恵を受けることができないわけだ。
●  耐震改修予定者は事前確認が必要
  耐震改修促進税制は、住宅(1981年5月31日以前に建築された家屋)を耐震改修した場合、改修費用の10%相当額(最高20万円)を所得税額から控除するものだ。耐震改修予定がある納税者は、現在居住している市区町村が耐震改修促進計画を策定し、耐震改修に対する補助制度を設けているかを、住宅所在地の都道府県・市区町村の建築部局や住宅部局に個別に事前確認する必要がある。
  各自治体による早急な耐震改修促進計画の整備が望まれるが、同制度は、2006年4月1日から2008年12月31日までの時限措置である。耐震改修促進計画の策定を予定している自治体でも、約7割(299自治体)は2008年3月ごろになる見込みだという。
  耐震改修を行っても、所在地の自治体が耐震改修促進計画を策定していなかったり、まだ策定中であれば、耐震改修促進税制の適用を受けることができない。せっかくの優遇税制は画餅に帰すこととなる。
●  縦割り行政の弊害にはあきれるばかり
  国土交通省ではこのような事態を受け、都道府県に対して、各市区町村に耐震改修促進計画の策定などについて指導や助言を行うことを要請している。10月には改めて自治体に対し、耐震改修促進計画の策定時期や補助制度の設置状況などの報告を求めるという。
  各自治体による早急な計画策定が望まれるが、それにしても縦割り行政の弊害の典型例にはあきれるばかりである。民間企業には考えられないずさんな全体計画である。
  憤りはおさまらないが、現実的に納税者を救う案として、いっそのこと補助制度を設けていない市区町村の住民でも耐震改修を行えば、耐震改修促進計画が策定された後でも、遡及して税制を適用するなどの運用をしてはどうだろうか。法律に基づくガチガチの行政機関には、こうした弾力的な運用は望むべくもないのだろうか。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.10.02
前のページにもどる
ページトップへ