>  今週のトピックス >  No.1321
同年代の給与格差広がる  2倍を超える企業も
●  同年代社員で平均1.84倍
  大卒総合職(役員を除く)45歳の社員の年収額には平均1.84倍の格差があることが、社団法人日本能率協会の調べで明らかになった(※)
  格差社会をめぐる議論が活発になってきたことを受け、今回で28回目となるこの調査でも初めて「年収格差」についての調査が行われた。バブル経済の崩壊とともに年功序列型を脱し、成果を重視した賃金体系の導入が進められているが、これが多くの企業で定着してきていることを物語る結果となった。
●  格差はますます広がる傾向に
  大卒総合職(役員を除く)45歳の最高年収額と最低年収額の比率は平均1.84倍だが、2倍を超える企業も39.7%を占めており、同年代の給与の格差が大きくなっていることがうかがえる。今後の方向性についても、年収格差を「縮小させる」と回答した企業はわずか1.0%。「現状のまま」が35.6%、「拡大させる」が39.8%となっており、7割以上の企業が成果主義に基づく賃金体系を今後も重視していく傾向にあるようだ。
  同年代の「できる社員」と「そうでない社員」との給与格差は、これによってますます広がるとみられる。社員にとっては成果を挙げるための行動計画や目標管理がより重要となり、一層の自己啓発が求められるであろう。こうして生じる給与の違いは生活水準、生涯賃金に大きく影響することから、格差の固定化はますます進むのではなかろうか。
  「人事・教育領域で最も重視している課題」では、過去6年間首位であった「成果主義」に代わり、「管理者層のマネジメント能力向上」がトップとなった。これは、企業がこれからの人材枯渇時代に備えて社員教育に力を入れ始めていることを表している。成果主義が定着してきた中で、企業が今後取り組むべき課題は人材育成であり、これを実現するためには部下の実力を引き出す管理者層の能力向上が重要であるということであろう。
●  社員が納得のいく給与格差であるべき
  給与格差を生んでいる成果主義は、運用を誤ると社員の働く意欲を低下させることになりかねない。実際、成果主義が導入されはじめた初期のころは結果だけを重視する「結果主義」となりがちで、多くの企業で優秀な社員の退職や組織力の低下を招くことになった。また、うつ病など「心の病」を抱える社員が増加している原因の1つに成果主義があるともいわれている。
  こうした事態を招かないためにも、頑張った人が適正に報われる「正しい成果主義」によって、社員の納得を得ることが大切だ。社員も給与格差が大きくなっていることを自覚し、常に自分を成長させ、状況の変化に沿って対応できる自立した人材になることが必要であろう。
社団法人日本能率協会「2006年度(第28回)当面する企業経営課題に関する調査」。2006年6月〜7月にかけて、全国の上場企業および非上場企業の主要7,000社の経営者を対象に行なわれた。
出所:社団法人日本能率協会 「2006年度(第28回)当面する企業経営課題に関する調査」
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.10.16
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