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中小企業庁「事業承継ガイドライン20問20答」を公表
●  事業承継ガイドライン20問20答
  中小企業庁はこのほど、中小企業経営者向けに事業承継の手引きとして「事業承継ガイドライン20問20答」を発表した。これは平成17年10月に設立された事業承継協議会が今年の6月に発表した「事業承継ガイドライン」を問答形式にして、より分かりやすく解説したものだ。フローチャートや事業承継計画表のサンプル、事業承継チェックリストなどもついており、非常に実用的な内容になっている。
●  中小企業の事業承継の実情
  上記の「事業承継ガイドライン20問20答」によれば、中小企業の経営者の平均年齢は約57歳で、この20年間で約5歳も上昇している。一方、引退予想平均年齢は約67歳とされており、この先10年程度で事業承継が発生する企業が多く出てくることが予想される。
  日本の企業の大部分が中小同族会社であるという事実を考えると、これからの企業経営にとって、事業承継というのは避けては通れない大問題である。
●  株式分散を防ぐための対策
  そのような企業にとって、今年5月に施行になった会社法は是非押さえておきたい内容の1つである。というのも、この会社法の施行により新たに可能になった対策があるからだ。ここではそのうちのいくつかをご紹介しようと思う。
  1つ目は「相続人等に対する株式の売渡請求」である。中小同族会社では株式を譲渡制限株式にしている会社が多く、株主が自己が所有する株式を他人に譲渡しようとする場合には原則として取締役会の承認が必要となる。ただし、相続等で株式の所有権が移転した場合にはこれまでの商法では譲渡承認の対象とならず、会社にとって不都合な相続人等が株式を取得したとしても、会社はその取得を拒否することはできなかった。
  それが会社法では定款に定めをおくことにより、そのような会社にとって不都合な相続人等に対して会社がその株式の売渡しを請求することができるようになったのである。事業承継の際には、株式の分散はできるだけ避けたいところである。万が一の事態に備えて、定款の見直しを行っておきたい。
●  議決権制限株式の活用
  2つ目は議決権制限株式の活用である。例えば現社長のご子息が複数いる場合に、自社株を後継者に優先的に相続させると、非後継者にもそれに見合う他の財産を相続させることが望ましいが、実際には自社株の評価額は比較的高い上、それに見合う財産などほとんどないという場合が多い。
  このような場合には種類株式である議決権制限株式の活用が考えられる。あらかじめ定款変更により、普通株式を議決権制限株式に変更しておき、後継者には普通株式を、非後継者には議決権制限株式を相続させることで、それぞれが同株数の株式を相続し、かつ議決権を後継者に集中させることができる。
  ただし、この手法には注意すべき点が2つある。種類株式への変更には株主総会の特別決議等の厳格な手続が必要になるということと、税務上、議決権制限株式の評価方法がまだ確定しておらず、今後改正されるかもしれないという流動的要素を含んでいるということである。実施を検討される場合には、そのようなリスクも頭に入れておいてほしい。
  またこれに限らず、相続対策等によく利用される生命保険や事業承継対策全般に言えることだが、現在の法律による取扱いが今後もずっと続いていくとは限らない。むしろ改正により取扱いが変わっていく可能性の方が高いであろう。節税面のみを重視した事業承継対策ではなく、総合的な視点で対策を考え、時の経過に応じてその都度メンテナンスをしていくというやり方が望ましいのではないのだろうか。
(村田 直 マネーコンシェルジュ・今村仁税理士事務所)
2006.10.23
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