>  今週のトピックス >  No.1329
医療機関による出産育児一時金の代理受領開始
●  出産育児一時金「35万」へ
  この10月から医療保険制度は大きく変わったが、少子化対策に効果がありそうなものとして出産育児一時金の増額がある。
  被保険者・被扶養者である家族が出産をしたときに支給される出産育児一時金・家族出産育児一時金が1児につき30万円から、今回の改定により35万円に引き上げられたのである(政府管掌健康保険)。
  被保険者側にとって嬉しい話であるが、財団法人・こども未来財団の「子育てコストに関する調査研究」(03年3月)によれば、分娩・入院費の平均は36万4,618円に達している。さらに定期健診の9万215円や妊婦用品の購入をはじめとした妊娠期間中の出産準備費4万8,849円を含め、妊娠・出産費用の総額(平均)は50万3,683円にもなっている。こうした背景を考えれば今回の改定は当然であるといえる。
  しかし、被保険者に不利になるような改定事項もある。埋葬料(費)・家族埋葬料だ。これまで被保険者が死亡したときは埋葬を行った家族に故人の標準報酬月額の1カ月分(10万円未満のときは10万円)。また、家族がいないときは埋葬を行った人に埋葬料の範囲内で埋葬にかかった費用(埋葬費)、また被扶養者となっている家族が死亡したときは被保険者に10万円が支給されていた。今回の改定により、埋葬料・家族埋葬料については一律5万円と減額になっている。
●  出産時の被保険者の負担軽減に
  出産育児一時金の増額とともに、医療機関が出産育児一時金及び家族出産育児一時金を代理受領することができるようになった。これまでは、出産育児一時金を申請する場合には、出産後に支給申請することになっていたので出産費用は被保険者等が立て替えなければならなかった。
  今回の改定により、被保険者は出産育児一時金を事前に申請し、医療機関等が被保険者等に対して請求する出産費用の額を限度として、医療機関が被保険者に代わって出産育児一時金等を受け取ることになったので、被保険者等の負担は大きく軽減された。
  これにより医療機関等は、被保険者又は被扶養者に出産後に交付する分娩費請求書及び出産証明書類の写しを社会保険事務所へ送付することになる。その後は社会保険事務所が請求によって支払いを次のように分けて対応する。
(1) 請求額が35万円以上である場合
出産育児一時金等の全額を医療機関等へ支払う。
(2) 請求額が35万円未満である場合
請求額として記載されている額を医療機関等へ支払い、当該請求額と35万円との差額については、被保険者に支払う。
  今後利用者の増加が期待されるところであるが、私の関係する医療機関等などに聞いている限りではまだまだ利用者はいないようである。今回の改定は被保険者のみならず、医療機関等にとっても歓迎すべきことだ。   少子化対策としても、今後の動向に注目したいところである。
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表 社会保険労務士)
2006.10.30
前のページにもどる
ページトップへ