>  今週のトピックス >  No.1335
経営幹部を育成する選抜人材教育の現状
●  選抜教育は上場企業で7割が実施
  企業が将来の経営幹部の育成に向けて実施する選抜人材教育の現状と課題に関する調査がまとまった。
  実施の現状については、選抜人材教育を実施していると回答した企業は57.6%(2005年調査では53.7%、2004年では53.7%)に上る。導入検討中の企業19.1%(2005年23.9%、2004年26.9%)を含めると4分の3を超える。上場企業だけでの実施率は68.6%(2005年71.1%)と高い。実施している企業に対して今後の方向性を尋ねると、「今以上に力を入れたい」とする企業が51.7%(2005年54.3%、2004年51.8%)と「現状維持」の46.9%(2005年42.9%、2004年45.5%)を上回り、今後、選抜研修への取り組みは強化されそうである。
●  教育カリキュラムの目的はマネジメント全般知識とリーダーシップ
  選抜人材教育の形態は、「社内集合研修」が72.1%(2005年67.9%)と全体の約7割超、「社外プログラムへの派遣」も63.3%(2005年64.2%)と多い(複数回答)。その他に割合は少ないが、「関連会社への出向」によってマネジメント経験をつませるものが17.7%(2005年16.5%)、「国内外大学院への派遣」で経営学を学ばせるものが11.6%。大学院派遣は2005年では15.6%であり、ひと頃のブームは落ち着いた感がある。
  選抜研修で重視したい内容を見ると「マネジメント全般の知識」が69.7%(2005年76.6%、2004年75.0%)と最も多く、「リーダーシップ」が58.6%(2005年52.3%、2004年48.5%)と続く。以下、「組織の方向性やビジョンを描く構想力」が43.4%(2005年36.9%、2004年38.9%)、「多様な発想力」が27.6%(2005年27.9%、2004年25.0%)、「正しい環境認識のうえでの判断力」が22.8%(2005年27.9%、2004年27.8%)、「問題解決力」が19.3%(2005年24.3%、2004年24.6%)などとなっている。経営陣に加わって欲しい人材として、会社経営にかかわる幅広い知識とリーダーシップが欠かせないと考えられているようだ。2005年に比べ、リーダーシップや構想力を重視する企業が増え、マネジメントや判断力を重視する企業が減少している。
●  課題は納得性のある選抜基準づくり
  一方で、選抜人材研修は日本では歴史も浅く、運営についてはまだまだ課題点も多い。最大の課題は「選抜方法の納得できる基準がない」が22.6%でもっとも多い。この設問は前年と集計方法が変わっているため比較はできないが2005年でも最も多い回答である。次に多いのが「(対象者が)忙しくて受講できない」が18.7%、「選ばれない人もモチベーションが低下する」という課題が16.2%、(「良いプログラムや講師を見つけるのが困難」という課題にも13.8%、「選抜人材研修の効果が見えない」という深刻な回答も13.8%と続く。
  結局、選抜人材研修自体の課題点としては、選抜基準が社内的に納得できる基準がない、それに伴い選抜されなかった社員の不平・不満・モチベーションの低下が発生するという2点である。また研修の結果・成果が見えにくいのも実施サイドとしては課題である。運営上の課題としては、効果のあるプログラムがないことや、そもそも対象者が研修に集まれないこと、予算が少なく、効果があると思われるプログラムを組めないことに集約される。
  選抜教育はマネジメントの質を高めるうえからも今後欠かせない。ただし研修方法はOffJTの机上の社内外のプログラムでは効果が期待できないのは当然である。子会社や社外でのOJTによるマネジメントスキルの体得が効果的だろう。
出所:財団法人社会経済生産性本部『将来の経営幹部育成に向けた選抜人材教育に関する調査』(2006年11月)
(可児 俊信、ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.11.13
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