>  今週のトピックス >  No.1338
法人の黒字申告割合は3年連続の上昇も低水準
●  景気回復は大企業が中心
  今年6月までの1年間に申告期限がきた法人の黒字申告割合が前年度に比べ0.4ポイント増の31.9%と、3年連続で上昇したことが、国税庁が公表した2005事務年度の法人税課税事績で明らかになった。景気の持続的な回復に伴う企業業績の向上が反映したことはいうまでもないが、まだ30%台の低い数字であり、過去最高だった1973年度(65.4%)の半分にも満たない。
  同課税事績によると、本年6月末現在の法人数は前年度に比べ1.0%増の297万7千法人で、うち2005年度中に申告したのは同0.9%増の276万7千法人だった。法人数、申告件数ともに過去最高。このうち黒字申告した法人の割合が31.9%だったわけだが、資本金1億円以上の大企業(調査課所管法人)だけをみると、黒字申告割合は52.9%と大きな差がある。景気回復は大企業が先行しており、7割弱の大部分の中小企業にとってはまだまだ苦しい経営環境だったということになろう。
●  申告所得は14年ぶりに50兆円を突破
  黒字法人の申告所得金額は50兆3974億円で、前年度に比べ16.7%増と大幅に伸びた。法人の申告所得が50兆円を突破したのは1991年度以来14年ぶりとなり、景気回復を税務申告面から裏付けた。黒字申告1件あたりでは5661万円で同14.5%の増加となり、こちらも過去最高の数字。一方、申告欠損金額は22兆7154億円で同2.7%減、赤字申告1件あたり1183万円で同3.1%減となった。
  申告欠損金額はピークの2002年度(33兆116億円)以降3年連続で減少しており、赤字法人が7割を占めるが、大企業に限れば申告欠損金額は前年度に比べ0.1%増となっている。つまり、申告欠損金額の減少はほとんどが中小企業にかかるもので、遅まきながら中小企業の経営内容も上向いているとみることができる。なお、申告税額は12兆5969億円で前年度に比べ13.3%増となっている。
●  連結納税の黒字申告割合は37.9%と効果大
  ところで、連結納税制度のメリットを裏付けたのは黒字申告割合の低さである。国税庁のまとめでは、2005事務年度における連結法人の黒字申告割合は37.9%だった。連結グループの親法人はほとんどが大法人だが、大法人の黒字申告割合は52.9%、そのメリットは歴然としている。
  今年6月末現在の連結法人数は、親法人629(前年度比17.1%増)、子法人6047(同9.7%増)の計6676法人(同10.4%増)だった。このうち、2005事務年度中に申告期限がきた467件(同41.1%増)の黒字申告割合は37.9%と低調だったが、それでも前年度に比べれば12.8ポイントも上昇している。申告所得金額は前年度に比べ548.9%増の1兆8481億円と大幅に伸びた。申告欠損金額は同28.9%増の9193億円だった。
  大企業を中心とした業績の回復によって申告所得は6倍以上に増加しているのだが、それでも黒字申告割合は約38%にすぎない。ところが、連結納税での申告書に添付された個々の親法人・子法人の決算内容の届出書をみると、届出件数5396件のうち黒字分は66.1%にあたる3564件だった。連結納税でなければ、黒字申告割合は7割近くになり、総個別所得金額も3兆774億円にのぼる。
  連結納税の効果は大きい。それでも申告漏れはある。2005事務年度は連結親法人64件が実地調査され、うち58件から923億円の申告漏れを把握、約49億円が追徴された。前年度に比べ調査件数は26.4%減少しながら、申告漏れ所得は179.7%増加した。メリットの大きい連結納税、せめて申告だけは適正にしてほしいが…。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.11.13
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