>  今週のトピックス >  No.1342
証券税制の今後を考える
  師走色合いが強くなるこの時期は、政府の税制調査会が次年度の税制改正について検討を始める時期である。その中で、個人にとっての影響を与える改正は、2003年以降に相次いで導入された証券税制がどうなるかであろう。そこで今回は、証券税制を取り巻く環境と今後の方向性について考えてみる。
●  主な証券税制について
  証券税制のうち期限付きで減税措置がとられているものといえば、

(1)上場株式等の譲渡益に対しての税率が10%へ減税(2007年末まで)
(2)上場株式配当金に対しての税率が10%へ減税(2008年3月末まで)
(3)公募株式投資信託の分配金への税率が10%へ減税(2008年3月末まで)

がある。
●  導入の背景
  現在のように証券税制に対する減税措置が打ち出された背景には、政府が「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと、当時1400兆円を超えていた個人金融資産のうち少しでも超低金利の預貯金に滞留していた金融資産を、証券市場へ呼び込みたいとの意向があったことは確かである。個人投資家の資金が直接株式を保有することに加え、投信や変額年金を経由しても株式市場へ流入した結果、導入時の政府の意向どおり、もしくはそれ以上に日本の株式市場は活性化した。このことは、新証券税制を導入する直前のTOPIXと現在のTOPIXを比較した下表を見れば明らかであろう。
  (1)2002年12月末
(新証券税制導入時期)
(2)2006年11月16日 2002年末対比
(2)/(1)
TOPIX 843.29 1582.04 1.87倍
  個人投資家を証券市場へ呼び込み、貯蓄から投資への流れを作るという点で言えば、証券税制に対する減税措置は役割を終えているといえるであろう。
●  現在の金融税制の課題点
  現在の金融税制の課題点としては、

(1)金融商品毎に税率が異なっていること。
(2)変額年金など金融商品と類似した商品でありながら、預貯金、投信とは異なり、総合課税となっている。
(3)金融商品の所得は、給与所得などとの損益通算ができない。

  という、3つがあげられる。
  (1)でいうなれば、例えば預貯金と株式の配当金で税率が異なる点、また割引金融債と利付債で税率が異なる点、さらには外貨預金と外貨MMFでは為替差益に対する課税が異なる点があるなど、金融商品が多様化するなかで、商品毎に税率を異なる体系を維持することは限界といえるであろう。
  (2)について言えば、変額年金も実際の運用は投資信託で運用されるにもかかわらず、株式と損益通算ができない一方で、投資信託にはない生命保険料控除や死亡給付金への非課税、さらには解約返戻金への一時所得課税となるなど税制面では大きくことなっている。
  また、(3)でいえば、発生する所得によって、損益通算が可能かどうかが決まっており、金融商品で得た所得に関しては、他の種類の所得とは損益通算ができない点も、課題があるといえる。
  給与所得と金融取引での損益通算可能となれば、個人の投資行動、特にサラリーマンの投資は一層加速される可能性もある。(3)に関しては、早期の実現は難しい可能性があるが、すくなくとも(1)は早急に改善すべきではないであろうか。
  最後に
  日本経済もある程度回復しまた。貯蓄から投資へという流れもできつつある中では、預貯金等他の一般的な金融商品よりも優遇す理由もなくなっている。その点も考慮し判断すれば、今後は徐々に金融所得への税率を一本化し、ゆくゆくは金融所得へは一本化課税を実施していくことが必要であると思われる。
  言い換えれば、金融所得一体課税のためには、証券税制自体は減税措置を終わらせる時代に差し掛かっているといえる。
2006.11.20
前のページにもどる
ページトップへ