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知っておきたい年次有給休暇の基礎知識
●  管理職も労務管理の基本は押さえておくべき
  年次有給休暇というとどんなイメージを持っているだろうか。それぞれの立場によっても変わってくるが経営者には、振り返ってみると嫌な思い出がある方も多いのではないだろうか。
  年次有給休暇は労働基準法で定められている権利である。使用者は、労働者の心身の疲労回復、労働力の維持培養のため、またゆとりある生活の実現のために、労働者から請求があれば年次有給休暇を与えなければならないのである。
  しかし、使用者のなかには労働者が年次有給休暇を取ろうとして請求しても、有無をいわせず却下してしまうケースがある。その場は、強引に却下しておさまる場合もあるが、その後大きな問題に発展するケースも少なくない。
  トラブル回避のために今回は、年次有給休暇の基礎知識についてまとめてみた。
●  「忙しいから」という理由だけでは時季変更権は認められない
  年次有給休暇を請求したときに、使用者が拒否する光景をたまにみかけるが、実は年次有給休暇を取得しようとする際には、使用者の承認は必要とされていないことになっている。部下から年次有給休暇申請があった場合には、原則としてその申し出のとおりにそれを取得させなければいけないのだ。
  ただし、使用者側にも、年次有給休暇取得に関する時季変更権というものが認められており、申し出がなされた際にこれを行使すれば、文字通りその取得時季を変更することができるのである。
  時季変更権は、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」と定められているが、単に業務が忙しいという理由だけでは、時季の変更を認めてはいないことになっている。
●  パートタイマーにも年次有給休暇はある
  年次有給休暇に関しては、労働基準法で「使用者は、6カ月間継続勤務し全労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と定めている。
  ここでのポイントは、この6ヵ月間が試用期間であっても契約社員でも権利は発生するということである。これはパートタイマーでも同じことで、週に5日勤務する場合には、所定の要件を満たせば正社員と同じ10日間の年次有給休暇が与えられるのである。
  また年次有給休暇の時効は2年となっているのでこの点についてもぜひとも覚えておきたいところだ。
●  退職時に年次有給休暇を請求された場合
  年次有給休暇に関するトラブルは、実は退職時に多い。年次有給休暇は労働者の当然の権利だが、実際はなかなか消化できていないのが現状で、勤続年数が長い人だと40日保有している人もいる。
  その40日の年次有給休暇を退職日にあわせて全部請求されてしまうと会社側はどうすることもできない。なぜなら退職時においての年次有給休暇は、退職日までに取得が可能であり、使用者(それに相当する管理者)による退職日を越える時季変更は許されないからである。
  このようなことにならないようにするためにも、会社側は、日頃から年次有給休暇を計画的に取得してもらえるように積極的に職場環境を整備していかなければならない。
  まずは経営者や管理職の年次有給休暇に対する考え方を根本的に変えることからはじめる必要がありそうだ。
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.11.27
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