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苦戦続く地方税の電子申告(eLTAX)
●  eLTAX利用届出を「行った」割合は54%
  地方税の電子申告(eLTAX:エルタックス)の普及は国税の電子申告以上にはかどらない。
  こうしたなか、地方自治体で構成する地方税電子化協議会が8月から9月にかけてeLTAXのホームページ上で実施した「地方税ポータルシステム(eLTAX)に関するアンケート」結果(有効回答数1832人)によると、eLTAX利用届出を「行った」割合は54%だった。半数を超えているものの、このアンケートはeLTAXのホームページ上で実施したものだから、関心のある回答者がほとんどで、当然の結果だろう。
  ちなみに、回答者の内訳は、85%が税理士(税理士法人含む)、9%が法人納税者、6%が個人納税者となっている。
  利用届出を行った理由は、「使っている税務・会計ソフトと連動して処理できるので便利」が75%、「申告書の窓口持参や郵送の必要がない」が68%と多く挙げられた。以下、「地方公共団体の閉庁時間でも申告書が提出(送信)できる」(47%)、「複数の地方公共団体に一括して申告書が送れて便利」(44%)などが続いた。一方、利用届出を行っていない理由では、「従来の書面による申告手続きで特に不便を感じない」が40%と多かった。
●  改善点は「電子署名の付与と送信」
  利用届出の容易さに対する評価では、全体では65%が「スムーズにできた」と回答しているが、その回答割合が法人納税者では81%だったのに対し税理士は63%にとどまった。利用届出で手間取った点は、「電子署名の付与と送信」が46%ともっとも多く、次いで「電子証明書の取得」(36%)、「入力する内容がよくわからなかった」(28%)などが続いている。
  「電子署名の付与と送信」は、申告手続きで手間取った点としても69%と断然多い結果となっており、今後の利用促進を図る意味で、重要な改善点のひとつといえる。
  利用した申告手続きとしては、「法人都道府県民税・事業税の申告」が圧倒的に多く、利用届出を行った回答者の85%が利用した。以下、「法人市町村民税の申告」が30%、「固定資産税(償却資産税)の申告」が11%で続く一方、利用届出を行ったものの14%が「まだ電子申告は行っていない」という現状も確認できた。申告手続きの利用回数は、「1〜5回」がほぼ半数の51%で、「10回以下」の申告利用者が約7割(67%)を占めた。
●  eLTAX利用届出・利用件数ともに未だ3万件台
  eLTAXの今後の利用意向については、全体の83%が「利用したい」(67%)、「どちらかといえば利用したい」(16%)と回答し、積極的な利用意向を示した。回答者の内訳別での利用意向「あり」層は、税理士が84%、法人納税者が87%、個人納税者が61%だった。
  なお、eLTAX利用届出の提出件数は、2005年1月の運用開始から今年10月末までの累計で納税者3万1674件、代理人(税理士等)3928件の合計3万5602件、また、利用件数は、法人都道府県民税・事業税2万6556件、法人市町村民税4686件、固定資産税744件の合計3万1986件となっている。
  国税庁の統計によると、わが国の納税者数は、法人が約270万社(2004年分)、営業所得者数が約183万人(2005年分)であり、また、税理士事務所数は4万件と推定される。こうしてみると、上記のeLTAX利用届出の提出件数は、税理士はほぼ1割となるものの、納税者は1%にも満たない。eLTAXの普及は苦戦が続いている。
参考資料:http://www.eltax.jp/download/downloadfile_view?id=20061106163641
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2006.11.27
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