>  今週のトピックス >  No.1350
「すかいらーく」や「牛角」など、有名企業でMBO相次ぐ
●  経営者が株主から株を買い取る行為
  経営陣がファンドなどと一緒に自社を買収する「MBO(マネージメントバイアウト)」が、身近な企業で相次いでいる。一年前にアパレルのワールドが踏み切ったのを皮切りに、レストラン経営のすかいらーくや焼肉チェーン「牛角」のレックス・ホールディングス、缶コーヒーのポッカコーポレーションなどがMBOで上場廃止となった。上場企業という「名誉」を捨ててまで、なぜ経営陣がMBOを選択したのだろうか。
  「マネージメント(経営陣)によるバイアウト(買収)」といっても実際に経営陣が上場企業の株式を全て買い集められるほどお金を持っているわけではない。そこで登場するのが、「買収ファンド」だ。経営陣はファンドと一緒になってお金を出し、市場で自社の株式を買い集める。この際株価に10〜40%程度のプレミアム(上乗せ)を付けることが多い。既存の株主は自分が持っている株式を経営陣とファンドが高く買ってくれるから、大概のMBOには喜んで応じる。
●  長期視点のリストラが狙い
  それでは高い金を払ってMBOをする経営陣の狙いは何なのだろうか。最もよくある理由は「中長期の戦略を見据え、大胆なリストラをしたい」からというものだ。株式を証券取引所に上場する最大のメリットは、投資家からいつでも、速やかに資金を調達できるところにある。非上場企業は一般的に金融機関からしかお金を借りられないが、上場企業は市場を通じて個人、外人、企業などから株式を売ってお金を調達できる。
  その反面経営陣は株主から、自分の持っている株式の価値、つまり株価を上げろというプレッシャーを受け続ける。また、株式を公開している以上、常に敵対的買収の脅威にさらされることになる。中長期を見据え、大胆なリストラをしようとすれば、多くの株主はその企業の株を売って、株価は急落する可能性が高い。そこで経営陣とファンドが株を買い取って、じっくり経営改革をしようというわけだ。
●  基本的にはみんな満足
  MBOに踏み切る企業はリストラが必要な企業が多く、株価は総じて低い。ファンドにとってはここにうまみがある。買収ファンドは投資した資金を3〜5年かけて回収できればいい。その間に経営陣と一緒になって企業を改革。株式の価値を高めた上で、その株式をもう一度証券取引所に上場したり、他者に売り抜けたりすれば利ざやが稼げる。世界の金余りを背景に買収ファンドは優良な投資先が少なくなってきている。すかいらーくやポッカなど知名度があり、経営陣がしっかりしている会社は、投資した資金が無駄になることはあまりなく、むしろ大きなリターンを狙えるチャンスと言える。
  MBOは経営陣が実施するだけに、従業員の反発も抑えやすい。王子製紙が北越製紙を買収しようとして、北越製紙の労働組合が猛反発したのは記憶に新しいが、MBOは北越製紙の経営陣がファンドと一緒になって北越製紙の株式を買収するようなもの。これなら労働組合は別に反発しなかっただろう。
  MBOはこのように、既存株主、経営陣、資金を出す(=新しく株主になる)ファンド、従業員といった利害関係者の利害を損なわないケースが多い。そのため今後も増えると言われている。
2006.12.04
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