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急増する保険関係の相談に適切な対応必要〜金融庁「金融サービス利用者相談室」相談状況
●  1日116件の相談が寄せられる盛況ぶり
  金融庁は昨年、「金融サービス利用者相談室」を開設した。利用者から寄せられる相談に専門の相談員が電話で対応、問題点を整理するためのアドバイスや業界団体が設置する紛争処理機関の紹介などを行っている。
  同庁のまとめによると、平成17年7月の開設から今年9月30日までの間に寄せられた相談は5万3,046件。1日あたり(休日を含む)平均116件の相談があったことになる。開設当時は1日平均71件から今年7月〜9月では1日平均147件と次第に増加しており、相談窓口へのニーズの高さが浮き彫りになった形だ。
  相談内容は、「預金・融資」など銀行関連、「保険商品・保険制度」など保険会社関連、「投資商品・証券市場など」「貸金業」「金融行政・その他」の5分野に大別されるが、うち保険会社関連は1万6,722件と全体の3割強を占めている。
●  目を引く保険会社に関連する相談の増加
  保険会社関連の相談は直近3カ月間(18年7月〜9月)で4,562件。開設当時は2,487件であり、比較すると倍近くに急増していることがわかる。この受付件数は前期(18年4月〜6月)に行った損害保険会社に対する行政処分の実施や損害保険会社の付随的な保険金の支払漏れに関連する一斉点検などを背景としており、保険金の支払いに関する相談などが大幅に増加したといえる。
  ちなみに保険会社関連の相談4,562件のうち、生命保険関連は1,336件、損害保険関連2,570件、その他656件という内訳だ。
  さらに細かく見ていくと、生命保険に関する相談受付件数1,336件のうち、個別取引・契約の結果に関するものが434件で、生保に関連する相談の3分の1を占めている。相談内容は、「けがで障害状態となったが、高度障害保険金が支払われない」「120日間入院保険金が出るはずの保険契約で120日間入院したのに、60日分しか支払われなかった」などとなっている。
  一方、顧客説明に関するものは300件で全体の4分の1。内容は、「保険金を請求したところ、約款の免責事由に該当するため支払われないと言われた。契約時には、そのような説明は受けていない」「2社の医療保険に加入しており、手術をしたところ、A社からは保険金が支払われたのに、B社からは支払われなかった。手術によっては保険金が出ない場合があるとはB社から聞いていなかった」「20年前に契約した保険が満期となったが、契約時に説明があった満期時の受取金額が満額支払われない」などである。
●  不適切な告知による不払など業界の改善急務
  さらに「態勢・手続き」に関する相談も251件と全体の2割を占めているが、中でも告知義務に関する相談が多いのは看過できない実態である。「入院歴があることを募集人に伝えたところ、告知しなくてよいと言われたのでそのまま契約したが、保険金請求時になって告知義務違反として保険金が支払われなかった」「通院歴があったが告知を行わなかったので、保険会社から告知義務違反であると言われた」「既往症を告知して保険契約したが、保険金請求時になって支払えないと言われた」などがその具体例である。
  消費者保護は時代の趨勢。業界をあげた改善の努力が急務であろう。
出所:金融庁「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等に関する公表について
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.12.11
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