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10年後の近未来は「人」が最重要課題に〜商工中金調査で9割の経営者が回答
●  10年前とは異なる近未来観
  商工組合中央金庫(商工中金)の調査によると、中小企業が約10年後の近未来に向けて重要と考えている経営課題のトップは「ヒト」で、人材の確保・育成を最優先に考えていることがわかった。中小企業経営者に10年後の「近未来観」をたずねた同金庫による「中小企業経営者の“近未来観”調査」(2006年7月調査)によるもの。
  この調査は同金庫取引先中小企業5022社(有効回答数2403社)を対象に、調査票を使ったアンケート形式で実施。1996年5月に同金庫が行なった「21世紀についての経営者意識調査」の結果と比較可能な項目もあり、この10年間に中小企業を取り巻く環境の変化が経営者に与えた影響の大きさを垣間見ることもでき、興味深いデータといえよう。
  「いざなぎ景気」超えで戦後最長が確実となった今回の景気拡大。中小企業の業績も上向きになってはいるものの、しかしその勢いは大企業に比べ緩慢で、地域間や業種間の格差も依然として残っている。そうした“実感”を伝えるかのごとく、「近未来は『中小企業の時代』になっている」かという問いに対して半数を超える経営者が「そう思わない」と率直に答えており、10年前とは異なる経営者の冷徹な視線が窺われる。
●  将来の最優先課題は“人材の確保・育成”
  調査結果で近未来における経営課題のトップに「ヒト」を挙げたのは85.9%。およそ9割近くの経営者が人材の確保・育成を最優先に考えていることになる。実は10年前のアンケートでもトップは「ヒト」であった。中小企業にとって自社が求める優秀な人材をいかに確保し育成していくかは、いつの時代でも常に頭を悩ます永遠の経営課題であることを改めて指摘してくれる結果だといえようか。
  特にこれからは“人材枯渇時代”が到来する。大手企業でも優秀な社員をいかに採用し、定着させるかに力を注ぎ込んでいる。ある企業では社員の定着率を高めるため約1,000人の契約社員を正社員に切り替えたという。今回の調査でも「中小企業に優秀な人材がより多く採用されるようになっていると思うか」の質問に対して、「そう思わない」と回答している割合が10年前の27.8%から50.3%に倍増しており、雇用不足感の一層の強まりを物語っている。
  こうした背景を考えると、経営課題のトップとなった「ヒト」が、2位の「経営組織・体制」(49.7%)に大きく差をつけていることにも納得がいく。重視したい企業イメージでも「収益性の高い企業」を抑え、「従業員が働き甲斐のある企業」と答えている企業が7割超とトップを占めたことからも、中小企業の人材確保・育成が一層重要な経営課題となっていることが痛切に伝わってくる。
●  経営力を研ぎ澄ます普段の努力を
  経営資源を潤沢に有している恵まれた中小企業は決して多くはない。少ない経営資源を最大限に活用しなければならない厳しい環境のもとで、経営力の一層の充実・強化を具現化するためには、優秀な人材の確保と育成が不可欠である。たとえば経営戦略や事業目的に応じて、異業種や地元の企業・官公庁・学校などと戦略的な提携やネットワークを構築していくには、これらに人脈を持つ人材(リクルーター)も必要となる。優秀な人材の確保・育成を行なうために、企業がどれだけの魅力を打ち出せるかは経営者自身の努力にかかっている。
出所:商工中金「近未来(=約10年後=2016年頃)』の日本経済、経営環境等についての経営者意識の調査」
(庄司 英尚 株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2006.12.11
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