>  今週のトピックス >  No.1358
銀行投信窓販、8年間の歩みと今後の課題
  2006年12月で、銀行での投信窓販が解禁されて9年目を迎えた。わずか9年間で、銀行が販売した公募株式投信(以下、株式投信)の純資産残高のシェアは50%を突破した。解禁から現在までの8年間は、まさに想定以上に順調に推移しているといえるであろう。そこで、今回は、8年間の銀行投信窓販の推移、そして今後の課題について考える。
  銀行の公募投信残高ならびに株式投信の推移をグラフ化したのが図1である。
【図1:銀行等の投信窓販残高の推移(1999年−2006年11月末)】
  図1から、銀行における投信窓販はそのほとんどが、株式投信であることが分かるであろう。また、今年11月末の銀行の株式投信純資産残高は、26兆0,684億円へ達し、昨年11月末の18兆9,864億円からわずか1年間で7兆円強の増加となっている。
●  銀行の株式投信の純資産残高シェア推移
  次に、株式投信の純資産残高に占める銀行のシェアの推移を表したのが図2である。
【図2:株式投信全体に占める銀行シェア】
  図2からお分かりのように、銀行シェアはここ2年同様に鈍化している。その背景には、証券会社の純資産残高が増加(昨年12月から今年11月末で4兆円強の純資産残高増加)しているためと考えられる。
●  銀行窓販の課題とは
  参入からわずか8年で、株式投信の純資産残高ベースではシェアの半分に達した銀行には、現在どのような課題があるのであろうか。
  まず、最大の課題は、毎月分配型販売からのステップアップをいかにして図るかである。毎月分配型の話法では、分配金の話題に顧客との会話が集中する傾向がある。中でも毎月分配型でメジャーなタイプは、海外債券へ投資する商品が多く、一度に高額を購入した顧客がどこまで為替リスクを理解しているのかには若干の疑問が残る。現在は、その為替リスクがプラスに作用しているため、その問題は十分顕在化していないが、円が独歩高の局面を迎えた場合には、それらがクレームとして発生する可能性もある。自己責任で購入したとはいえ、全面的に顧客側だけに責任があるとはいえないケースもあるのではないであろうか。極論をいえば、分配金など出ない投資信託をしっかり販売できる人材をいかに育成できるかが重要といえるであろう。
  次に、既に販売した保有顧客へのフォローをどのように行っていくかである。相場は日々変動するため、顧客の保有する投信の現在価値も日々変動している。しかし、現在のところ、銀行が投信販売により獲得する手数料は、販売時に偏っているものが多く、その結果、販売後の顧客に対するフォローは十分とはいえないケースも多々あると思われる。窓販から9年目となるこれからは、売りっぱなしにならないための販売後の顧客フォロー体制構築が銀行の重要な課題ではないであろうか。そのためには、現在の投信の手数料制度、また銀行における評価制度も今後、見直しが必要となる可能性がある。
  さらにもう一つの課題は、顧客の年齢、保有資産などをトータル的に勘案して、リスク許容度に見合った提案力を磨くことである。現在、銀行では、投信だけでなく、外貨預金、証券仲介業による株式・債券の仲介、変額年金など、様々なリスク商品が販売できるようになっている。これは、言い換えれば、銀行が金融商品のデパートとなりつつあるということである。この流れは今後も一層加速するであろう。一方でインターネットの普及などにより顧客側の情報収集力は、一昔前と比べ格段に向上している。そのような中で、販売して何%かの手数料を得るとなれば、販売する側の銀行員に対して金融のプロとしての提案力が今後一層問われることは間違いない。銀行が公的資金を返済し、収益力も大幅に改善しつつある現在、人材教育費は必要コストと考え、それなりの費用を割くべきといえる。
  以上のように、今まで順調に推移してきた銀行の投信窓販であるが、その要因は、銀行の提案力によるものというよりは、銀行というブランドによるところが大きいと思われる。しかし、そのブランドは銀行が元本保証の預金で築きあげたものであることはいうまでもなく、今後はリスク性商品の販売とともに低下していく可能性がある。今後も銀行の投信窓販が順調に推移していくためには、顧客から提案力で信頼を得る人材の育成が必要といえるのではないだろうか。
*公募投資信託とは、不特定多数の投資家に販売される投資信託。これに対し、2名から49名までの投資家に限定して販売される投資信託は私募投資信託と言われる。

*データ出典:投資信託協会
2006.12.18
前のページにもどる
ページトップへ