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国民年金基金の現状
●  連続した予定利率の引下げ
  厚生年金に加入しているサラリーマンなどと、自営業者などの国民年金の第1号被保険者とでは、将来受け取る年金額に大きな差が生じる。この差を解消するために、自営業者などの上乗せ年金である国民年金基金制度が1991年4月に創設された。これにより、自営業などの公的な年金は「二階建て」になった。
  バブル崩壊と同時期に創設された国民年金基金は、大きな期待を背負いながらも不本意な経緯を辿ってきたが、ここに来てようやく好転してきた。
  国民年金基金は、厚生労働大臣の認可を受けた法人で、47都道府県に設立された地域型基金と25の職種別の職能型基金の2種類がある。地域型国民年金基金は、1991年5月に全国47都道府県で一斉に設立され、職能型国民年金基金は、25の職種について1991年5月より順次設立された。
  しかし、バブル崩壊の低金利下にあって、予定利率は5.5%から、1995年(4.75%)、2000年(4.0%)、2002年(3.0%)、2004年(1.75%)と連続して引き下げられた。
●  積立不足の拡大と縮小
  国民年金基金は、加入員の掛金を積立て、それを財源として将来の年金給付を賄うという事前積立方式で運営されている。よって毎年度末に責任準備金を算定し、これと現に保有する年金資産と比較して必要な原資が確保されているかどうかを検証している。資産の運用利回りは図表にあるとおり2002年度から2005年度が3年連続してマイナス利回りになるなど、最悪の状況が続いた。その結果、責任準備金に対する年金資産の積立不足が発生し、2002年度末には年金資産額が責任準備金額の71%にしか満たない水準にまでなった。
  こうした予定利率の引下げと積立不足によって、老後資金準備手段としても魅力が薄れ、加入者数は伸び悩んだ。1998年度末に累積加入者100万人を突破したものの、その後は年間5万人程度の新規加入者に止まり、2005年度末の累積加入者は138万人である。
  2005年度末において国民年金を納付している第1号被保険者は1,652万人であり、それに対して累積加入者はその8%に過ぎない。
●  国民年金空洞化の影響
  株価の回復に伴い2003年度から運用利回りは好転し、20%近い利回りを達成した年もあった。おかげで年金資産の積立不足額も責任準備金額の3%程度にまで縮小し、年金財政は好転した。現在では赤字財政からの脱却が目前であり、財政面での不安は少ない。
  しかし、今後の展望は明るくない。国民年金基金は国民年金の保険料の免除者(一部免除・学生納付特例・若年者納付猶予を含む)は加入できない。国民年金の納付者は年々減少しており、国民年金が空洞化していることから、国民年金基金への新たな加入者が増えることは期待できないためである。
【国民年金基金の資産額等の推移】
出所:国民年金基金連合会ウエブサイト(http://www.npfa.or.jp/)
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2006.12.25
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