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平成18年の賃金の引き上げ状況
●  賃金引き上げ企業は約8割
  景気の回復は、賃金の引き上げにつながっているのだろうか。厚生労働省の賃金引き上げの実態調査がまとまったので報告する。
  平成18年中に賃金を引き上げた(または引き上げる)と回答した企業は全体の77.5%と、前年調査の73.5%をやや上回った。逆に引き上げないのは16.6%である(そのほかに「未定」や「引き下げ」が5.9%)。景気の回復の恩恵が賃金にも行き渡り始めている。
  企業規模別では、5,000名以上の規模では89.3%(前年82.0%)が引き上げると回答したが、300名未満では72.8%(前年70.2%)にとどまる。賃金引き上げを実施しないという回答は5,000名以上では9.7%だが、300名未満では20.6%と、企業規模によって賃金引き上げの意欲に差がみられる。
●  引上げ額は4,000円強
  実際の賃金の改定額(引き上げた額と引き下げた額も含めた平均)は、従業員数を加味した加重平均で4,381円である。前年は3,904円であり改定幅はより拡大した。企業規模別に見ると、5,000名以上では4,848円と平均より高く、300名未満では3,612円と平均を下回っている。
  賃金の改定にあたって重視する要素としては、企業業績が63.5%、世間相場が8.6%、労働力の確保が7.2%、雇用の維持が6.4%、労使関係の安定が6.2%、その他が7.5%となっている。前年調査では企業業績が75.2%、世間相場が8.4%、労働力の確保が4.2%、雇用の維持が4.3%、労使関係の安定が1.9%、その他が5.6%となっており、前年に比べ企業業績よりも労働力を維持確保できる水準にするために賃金を改定したことがうかがえる。
●  ベースアップは行われない
  賃金を引き上げる仕組みとして定期昇給制度が設置済みと回答した企業は、管理職向けの定期昇給制度では59.6%、一般職向けの制度は72.7%といずれも過半にのぼる。管理職は定期昇給制度の設置率は一般職より低い。
  管理職59.6%のなかで定期昇給を実際に行ったのは52.0%、行わなかったのは7.6%である。一般職に対しては定期昇給を64.6%が行い、8.1%が行っていない。
  定期昇給制度があると回答した企業に対して、定期昇給とベースアップを区別しているかをたずねると、50.5%の企業が区別していると回答した。ただし、50.5%のうちベースアップを行ったのは11.8%にとどまり、38.8%は「行わない」「ベースダウンを行った」と回答している。つまり定期昇給は行ったものの、大部分の企業はベースアップを行っていないことになる。
  景気回復に伴って賃金も引き上げられており、その理由も人材確保が大きな目的になってきていることがわかる。
出所:厚生労働省「平成18年賃金引上げ等の実態に関する調査」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.01.15
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