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新入社員、3割「今の会社に一生勤めたい」
●  過去10年間で最も高い「安定志向」
  社会経済生産性本部の調査によると、昨年春の新入社員のうち、「今の会社に一生勤めようと思っている」という人が約3割と、秋の調査において過去10年間で最も高い水準になっていることが分かった。また、99年には5割を超えていた「条件が良い会社があれば、さっさと移る方が得だ」との回答は4割を切り、過去最低の水準になっていることも分かった。
  この調査結果は、同本部が昨年主催した研修に参加した企業の新入社員に実施した「2006年度新入社員半年間の意識変化調査」によるものである。この調査は、1991年から継続的に行なわれており、今回は1,290人から回答を得た。
  今回の調査結果からうかがえる、新入社員の会社への定着志向が高まっている背景には、景気回復で就職状況は改善したものの、厳しい競争を職場で実感した結果、終身雇用への回帰傾向が表れていることが挙げられる。大卒新入社員の3人に1人は、3年以内に退職しているという若年層の高い離職率が問題となっている中、今回の調査結果は、次世代を担う若手従業員についての情報として、なかなか興味深い内容である。
●  年功型賃金を望む声が増加
  アンケート結果を見ると、「今の会社に一生勤めたい」との回答は、98年に14.2%まで下がっていたが、その後、徐々に上昇し、今回は29.2%と3割近くに上った。転職についても、「きっかけ、チャンスがあれば転職してもいい」という人は48.2%で、6年ぶりに5割を下回っている。また、「将来への自分のキャリアプランを考える上では、社内で出世するより、自分で起業して独立したい」とする回答が減少し、約4人に1人(25.7%)の割合となっている。こうした結果を見ると、以前と比べ、新入社員として入社した際には、会社への帰属意識が高くなっていることが分かる。しかし一方で、「自分のキャリアプランに反する仕事を、がまんして続けるのは無意味だ」と思っている人の割合は6割以上であり、転職の際に重視する事として、「仕事にやりがいがあった方がよい」が1位となっているところを見ると、入社後の配属や仕事内容により離職する可能性は依然として高いと思われる。
  また、給与制度について、02年には73.9%が「各人の業績や能力が大きく影響する給与システム」を望んでいたが、今回は61.5%に下がり、依然多数を占めるものの、過去最低の水準になっている。逆に、「年齢・経験で給与が上がるシステム」を選ぶ人は38.5%と、上昇傾向が続き、終身雇用とともに年功型賃金を望む声が増えていることが分かる。これは、上位2割程度が評価される成果主義の厳しさと将来への不安から、過剰な競争もなく、将来を見越して安心して働きたいという新入社員の意識の表れであろう。
●  離職率の低下につなげる取り組みが必要
  若手社員の離職率が高い中、一生働きたいと考える新入社員の会社への定着志向が高まっていることは朗報であろう。問題は、どのようにして離職率を低下していくかである。高い離職率は、1人の新入社員を採用するのに150万円はかかるといわれる採用コストの増大や業務の混乱を招くだけでなく、社会的信用力も失墜しかねない。また、技術やノウハウの継承が難しくなる為、会社の衰退につながる可能性もある。企業は、今回の調査結果を参考にして、低離職率の実現にむけて取り組んでいただきたいところである。
出所:財団法人 社会経済生産性本部「第16回 2006年度 新入社員 半年間の意識変化調査」
(http://www.jpc-sed.or.jp/contents/whatsnew-20061220-1.html)
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.01.15
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