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電子申告に係る所得税額の特別控除制度の創設
●  2007年分か2008年分の確定申告で5,000円を控除
  低迷する電子申告・納税(e−TAX)システムの利用促進に向けて、2007年度税制改正では、納税環境整備の一環として、地方自治体から電子証明書を取得した個人事業者などが確定申告をe−TAXで行う場合、所得税額から5,000円を控除する特別控除制度が創設される。2007年分または2008年分の確定申告において、それぞれの年の申告期限までに自己の電子署名を添付して電子申告した者が対象となる。
  5,000円(その年の所得税額を限度)を控除できるのは、2007年分か2008年分かどちらか1回に係る電子申告での適用となる。また、これまで確定申告に際し添付が義務づけられていた医療費の領収書や生命保険料控除の証明書など第三者が作成した書類は添付が不要となる。ただし、これらの書類は、添付が不要となっても、3年間は保管し、いつでも提出・提示できるようにする必要がある。
●  コンビニ納税は来年1月から
  この電子申告特別控除は、低迷する電子申告利用の大きなインセンティブとして期待したいところだが、なぜか個人の申告に限られ、5,000円を税額控除する適用年も1年分だけとなれば、その効果は未知数といえる。電子申告における第三者作成書類の添付省略や、一定要件での電子署名の省略なども盛り込まれたことから、環境整備面では大きく前進したといえるが、今後の電子申告利用の状況が注目されよう。
  納税環境の整備では、そのほか、コンビニなど国税当局が指定する納付受託者に納税できる制度を創設し、国税の納付手段を多様化する。コンビニで納税する場合は、コンビニに税金を支払った日に国税が納付されたものとみなして、利子税や延滞税などの規定を適用するほか、コンビニの納付義務や帳簿保存義務など所要の整備が図られる。コンビニ納税が可能になるのは、2008年1月4日以降となる予定だ。
●  1月4日から税理士関与の納税者の電子署名は不要に
  電子署名の省略については、財務省が昨年12月19日に公表した2007年度税制改正大綱に盛り込まれ、施行時期も明記されていたが、早くも今年1月4日から可能となった。e−TAXで申告データを送信する際に必要だった電子署名や電子証明書が一部省略される。
  これは、昨年12月27日の財務省令改正によるもので、「国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令」5条1項に「ただし、当該電子署名が国税庁長官が定める者に係るものである場合には、当該申請等の情報に当該者に係る電子署名を行うこと及び当該電子署名に係る電子証明書を送信することを要しない」とするただし書きを加える改正が行われた。
  一方、同日付の国税庁告示で、「国税庁長官が定める者」として、(1)源泉所得税の徴収高計算書の送信を行う者、(2)税理士などが依頼を受けて税務書類を作成し、依頼者に代わって電子情報処理組織により申請などを行う場合のその依頼者、が掲げられた。
  同税制改正大綱では、電子署名や電子証明書の送信が不要な者として、税務署の端末を使用してe−TAXで申請などを行う者も挙げられたが、こちらは2008年1月4日以後の申請などに適用される。電子署名の取得には、時間や手間がかかることから、e−TAX利用を躊躇していた納税者も多いと思われる。納税者にとっては朗報だが、一方で税理士のe−TAXへの積極的な関与が求められる状況となっている。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.01.15
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