>  今週のトピックス >  No.1374
2007年、個人の資産運用の注目点
●  個人金融資産の推移
  新年を迎え、今回は、個人金融資産の実状と2007年の個人金融資産の展望を考えてみる。2000年以降、日本の個人金融資産は1,400兆円から1,500兆円の間を推移している。一方団塊の世代を始め個人の資産運用への関心は、年々高まっている。ではまず、個人金融資産の残高がどのように変化したのか「個人金融資産の年度比較」を示したい。
【表1 個人金融資産の年度比較(単位:兆円)】
  金融資産残高
全体 現預金 株式 投資信託 保険・年金 その他
(債券など)
1990年度末 1,026 481 172 34 211 128
2005年度末 1,506 771 178 55 393 109
出典:日本銀行 「資金循環勘定」 厚生労働省「人口動態統計月報年計」
  表1から、全体に占める現預金の比率は、1990年の47%から51%へ4ポイント上昇、保険・年金は20%から26%へ6ポイントも上昇していることが分かる。一方で、株式は16%から11%へ5ポイント低下。投資信託は0.3ポイントの微増に留まっている。個人投資家が低金利の預金から株式、投資信託へ振り替えているとの報道がある割には、表1のデータでは個人の資産運用熱が増加しているのかと疑問を感じるかもしれないが、上記の株式、投資信託は時価表示となるため、相場が振るわなければ、例え購入者の裾野が広がっていても残高はあまり増加しているように見えないという点を考慮する必要がある。
  また、金融機関側の視点からいえば、個人投資家の預金からの振り替えは、まだまだ本格化しているとはいえない。仮に、投資信託が欧米並みの個人金融資産に占める比率が10%まで拡大したとするなら、少なくとも100兆円の潜在的なマーケットが広がっているともいえる。
●  2007年、個人の資産運用に影響を与える出来事とは
  今年、個人の資産運用を考える上で、注目すべき点は国内金利の動向であろう。昨年、日銀は、翌日物の無担保コールレート(いわゆる政策金利)の誘導目標金利を0.25%へ引き上げ、今年も一段の引き上げが行われる可能性がある。
  もし金利引き上げが行われた場合は、預貯金の金利が軒並みアップすることになる。これは、高齢者を始め、金融資産を多く保有する富裕層にとっては朗報であろう。また国内金利の上昇は、生命保険などの予定利率、据置利率などの引き上げにつながる可能性も高い。これは今年度解禁される生命保険の銀行窓販全面解禁にも少なからず影響を及ぼすはずである。
  一方で悪影響としては国内金利が上昇に転じた場合、いままで個人投資家が海外の高金利を求めて行っていた外貨投資の流れが、一部国内預金へ回帰する可能性もある。これは、円高要因の発生であり、40兆円といわれる個人の外貨建て資産にも為替差損を発生させる可能性を含んでいる。
  また、仮に日銀の利上げが今後数回行われた場合には、預金金利の一層の上昇で「貯蓄から投資へ」という一辺倒の流れが、「投資から貯蓄へ」という逆流へと変化する可能性もある。
  ここ数年は、個人の資産運用における注目事項は米国景気の動向を始め、中東情勢、BRICs、EU拡大など外的要因が大きかったが、2007年に関しては、国内の金利動向は非常に大きな注目事項といえるであろう。
2007.01.22
前のページにもどる
ページトップへ