>  今週のトピックス >  No.1375
企業の賃金外人件費負担は一段増
●  法定福利費は引き続き増加
  企業の福利厚生費などの2005年度実績が、日本経団連から報告された。
  企業が従業員一人あたりについて負担する法定福利費(健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険などの会社負担分)は、月額で75,436円(2004年度は74,106円、2003年度は72,853円、2002年度は68,552円)で前年度と比べ1.8%の増加となった。
  一方、社宅や慶弔金など企業独自の福利厚生施策費用である法定外福利費は、28,286円(2004年度は28,266円、2003年度は27,958円、2002年度は28,203円)で前年度と比べほぼ横ばいとなっている。
  また、退職一時金や企業年金掛金などの退職金費用は81,685円で、2004年度の80,499円から微増、2003年度の92,037円、2002年度の87,283円から大きく減少している。これは企業年金の運用利回りが回復したことと、早期退職制度などが一段落したためである。
  これにより、福利厚生費(法定および法定外の合計)、退職金費用の合計は、185,407円となり、前年度比1.4%増となった。2005年度の現金給与総額は583,386円であり、前年度比0.9%増となったため、現金給与に対する福利厚生費・退職金費用の割合は31.8%となり、前年度より0.2ポイント増加している。やはり法定福利費の増加が影響している。
●  現金給与以外の人件費は倍増
  月額給与を100とした場合の法定福利費、法定外福利費、退職金費用の割合を時系列に追ったものが図表である。30年前の1973年度は、3つの費用を合計しても16%程度に過ぎなかった。
  社会保険の充実、少子高齢化の進展とともに、社会保険料は増加を続け、1973年度の現金給与に対する法定福利費の割合は5.9%だったが、今や12.9%と倍以上になっている。
  退職金費用は4.2%から14.0%と3.5倍増である。これは、勤続年数の長期化と給与の上昇により、退職金額が高騰した結果といえる。特に月額給与の実額が伸び悩んだ1990年代後半以降は、人員調整に伴う退職金支給も重なり、対現金給与割合は急速に高まった。
  それに対して法定外福利費は1973年度に5.8%から4.8%へとやや微減となっている。法定福利費や退職金費用の増加による企業負担増のしわ寄せが企業の法定外福利費の抑制につながっている。
  結果として福利厚生費、退職金費用の合計額の現金給与に対する割合は、1973年度の15.9%から2003年度には31.8%と倍に高まった。今後も年金、介護、医療とも社会保険料率の上昇が確実視されていることから、企業の総額人件費はますます圧迫されていく。
【福利厚生費・退職金運用の対現金給与の比率の推移】
出所:日本経団連「福利厚生費調査結果(2005年度)」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.01.29
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