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居住用財産の譲渡損失の特例
●  居住用財産の譲渡損失に関する2つの特例
  いよいよ2月に入り、この16日から確定申告が始まるわけだが、譲渡所得の申告については特例も多く、頭を悩ませる人も多いだろう。
  今回は、マイホームを譲渡して譲渡損失が出た場合に受けられる2つの特例を取り上げて、それぞれの適用のポイントを解説していきたい。
  まず、居住用財産を譲渡して譲渡損失が出た場合、つまり売却価額が、取得価額と譲渡費用の合計額に満たなかった場合には、以下の2つの特例を受けられる可能性がある(この2つの特例は本来昨年末で適用期限切れとなるはずであったが、平成19年度税制改正大綱で3年間延長される見通しとなった)。
◆特定居住用財産の買い換えなどの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
◆特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  この2つの特例の明確な違いは、前者は居住用財産を買い換えている必要があるが、後者では買い換える必要がないという点である。マイホームを売却し、賃貸住宅に転居したというような場合でも、後者の特例は利用できる。詳しい要件は後で説明するが、まずこの違いを理解しておいていただきたい。
  逆に両者に共通しているのは、どちらも譲渡損失の金額を他の給与所得などと損益通算することができる点である。その年で損益通算しきれない分については翌年以後3年間繰り越すことができる(ただし、繰越控除の適用を受けようとする年の合計所得金額が3,000万円を超える年については適用できない)。
●  特定居住用財産の買い換えなどの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  では、前者の買い換えなどの場合の特例について見ていこう。   まず、居住用財産を買い換える必要があるのは先に述べたとおりだが、ただ単に買い換えればいいというものではない。譲渡資産と買換資産のそれぞれに要件がある。
◆譲渡資産・・・譲渡年の1/1における所有期間が5年超であること
◆買換資産
  (1)譲渡年の前年1/1〜譲渡年の翌年12/31までに取得をすること
  (2)取得日の翌年12/31までに居住すること(居住見込みも可能)
  (3)居住用部分の床面積が50u以上であること
  (4)適用年度末において、買換資産の取得に係る住宅ローンがあること
  気を付けるべき点としては、譲渡資産の所有期間が5年超であるかどうかの判定が譲渡年の1/1において判定されること、買換資産の取得は譲渡の前年でも可能であること、譲渡資産の住宅ローンはなくても構わないといったところだろう。
  なお、500u超の敷地に対応する部分の譲渡損失の金額は繰越控除の対象とならない。また、買換資産の取得のための住宅ローンについては、住宅ローン控除との併用も可能である。
●  特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  では後者の買い換えの要らない特例の方を見ていこう。この特例の基本的な趣旨は、マイホームの売却価額よりも住宅ローン残高の方が大きい状態で、自己資金などを充てて売却した場合に、その自己資金などを充てた部分に相当する損失については、他の所得との損益通算や繰越控除を認めるというところにある。
  要件については以下のとおりである。こちらは買い換えが必要ないため、要件は譲渡資産に関するもののみとなる。
◆譲渡資産
  (1)譲渡年の1/1における所有期間が5年超であること
  (2)譲渡日の前日において、譲渡資産の取得に係る住宅ローンがあること
  なお、前述したとおり、対象となる損失は譲渡資産の取得に係る住宅ローンの金額(その譲渡資産の取得費などを限度とする)のうち、譲渡資産の売却代金で返済できなかった部分、つまり譲渡資産の売却価額を控除した残額部分となる。
(村田 直 マネーコンシェルジュ、今村仁税理士事務所)
2007.02.13
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