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最高裁、相続開始時に更地でも小規模宅地特例適用
●  福岡高裁は相続開始時に更地のものは居住用宅地にあらずと判示
  最高裁第三小法廷は1月23日、小規模宅地などの評価減特例を適用した相続財産の更地の土地について、実際に被相続人が居住していたが、土地区画整理事業のために借換地指定されたことに伴い、やむを得ず相続開始時に更地となっていたのだから、そのような場合でも、特例の適用があるとの判断を示した。特例の適用は認められないとしていた原審の福岡高裁の判決を破棄し、差戻しを命じる判決を下している。
  この事件の土地は、土地区画整理事業の敷地内にあり、市が借換地を指定するとともに、通知があるまで土地の使用収益を禁止することなどを通知したことから、被相続人らは仮設住宅に転居し、土地の上の建物は取り壊され更地となっていたもの。相続後、借換地が使用収益できることになって、相続人は、この土地の上にビルを建てて入居した。
  相続税の申告にあたっては、小規模宅地などの評価減特例の適用があるものとして法定申告期限内に申告をしたが、所轄税務署が特例の適用を否認し、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため訴訟となったものだ。
  原審の福岡高裁は、同特例の適用にあたっては相続開始直前に土地に被相続人らが現に居住していたか、少なくとも相続開始時に居住用建物の建築工事が着工され、居住用建物の敷地として使用されることが外観的、客観的に明らかな状態にあるべきだと判断。相続直前に土地と借換地が更地の状態であったのは明らかであるから、これを居住用宅地として認めることはできないとして、納税者の主張を斥けた。
●  特段の事情がない限り居住用の土地にあたると判断
  これに対して最高裁は、土地区画整理事業における借換地指定によって、土地、借換地の使用収益がともに禁止されたため、仮設住宅への転居や建物の取り壊しを余儀なくされ、建物建築も不可能な状況のまま相続が発生したという納税者の事情を考慮している。
  判決では、相続開始の直前においては、土地は更地となり、借換地も居住の用に供されてはいなかったが、それはやむを得ない状況があったからであり、相続開始ないし相続税申告の時点で、相続人らが借換地に居住する予定がなかったと認めるに足る特段の事情のない限り、居住用に供されていた土地にあたると解釈するのが相当との考えを示した。
  そこで、この事件では、相続人らは借換地指定通知に伴って仮設住宅に転居しており、また、相続開始後とはいえ、借換地の使用収益が可能となると、借換地の上にビルを建設して入居していることから、特段の事情があったとは認められないと判断している。
  その結果、原審の判断には明らかな法令の違反があるとして、福岡高裁に差戻しを命じる判決を下したものだ。
参考資料:最高裁判決の全文↓
(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070123130111.pdf)
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.02.13
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