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必要経費に算入できる青色専従者給与の留意点
●  必要経費に算入できる青色専従者給与の留意点
  2月16日から2006年分所得税の確定申告が始まっているが、青色申告者が家族従業員に支払う給与(青色専従者給与)を必要経費に算入するためには、その年の3月15日までに給与の金額など必要事項を記載した届出書を税務署に提出しておく必要がある。
  青色専従者給与は、一定要件を満たせばその給与を必要経費に算入することができる。青色申告者は、記帳によって家計と事業の経理区分が明確なので、家族従業員に支払う給与も、一般の従業員の給与と同様に取り扱うべきとの考えによるものだ。
  家族従業員の給与が必要経費として認められる要件は、(1)生計を一にする配偶者や15歳以上の親族のうち、その年を通じて事業にもっぱら従事している期間が原則6カ月を超える人に支払う給与であること、(2)その給与が仕事に従事している期間、仕事の性質や程度、一般の使用人や同業者の従業員給与、その事業の種類や規模・収益の状況からみて、仕事の対価として相当であると認められること、とされている。
●  青色専従者給与の支給打ち切りには要注意
  家族従業員の給与を必要経費に算入できることは大きなメリットだが、一方で留意点も少なくない。例えば、景況の変化や専従者の就業内容に異動が生じたことなどから、当初届け出た給与の金額などに変更がある場合は、すぐにその旨を税務署に届け出なければならない。さらに注意が必要なのは、事業収入が思うように上がらないなどで、給与の支給を年の中途で打ち切った場合である。なぜなら、それまでに支払った専従者給与を必要経費に算入できないケースが出てくるからだ。
  原則的には、就業期間が6カ月を超えていれば、それまでに支払った給与は必要経費となるが、半年未満の場合には、その間に支払った給与の必要経費算入は認められない。ただし、その場合は、すでに納めた源泉徴収税額の還付を受けることができるし、事業主は、その配偶者について配偶者控除の適用を受けることができる。
●  厳しくチェックされる青色専従者の範囲
  また、青色専従者の範囲にも注意が必要だ。所得税法では、上記のように、青色事業専従者を「青色申告者と生計を一にする配偶者その他の15歳以上の親族で、もっぱらその者の営む事業に従事するもの」と規定している。ここで問題となるのは、「生計を一にする」と「もっぱら」の解釈である。
  生計を一にする親族となれば、一般的には事業主の妻や子どもだろうが、子どもが結婚して別居している場合は「生計を一にする」とはいえず、専従者とはならない。しかし、結婚していても、親と同居しており、1階に親が2階に子ども夫婦が住んでいる場合で、食事をともにしているなど「生計を一にしている」事実があるとなれば、青色専従者として認められることになろう。
  また、15歳以上の親族であれば高校生や大学生の子どもでも該当するが、現実にはこれらの子どもの専従者給与が否認される可能性は高い。青色専従者は、通常1年のうち6カ月を超える期間その事業に従事した者とされているが、例えば、親の事業を週に2〜3回とか、毎日2〜3時間手伝っているという状態では、たとえ6カ月を超えていても、「もっぱら」事業に従事しているとはいえず、青色専従者とは認められまい。
  税務当局は、こうした青色専従者の範囲について厳しくチェックするので、安易に子どもなどを青色専従者とし、所得を軽減しようとは考えない方が無難であろう。
  青色専従者給与の必要経費算入の適用を受けるためには、3月15日までに、青色専従者の職務内容や給与の額、他の業務や就学の事実などを記載した「青色専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しなければならないが、提出したからといって、届け出た給与額などが無条件で認められるわけではないことに留意したい。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.02.19
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