>  今週のトピックス >  No.1393
団塊世代の後継者不足は深刻
〜技能の伝達に課題〜
●  6割以上の人、「自己の技術や技能を後継者に伝えるべき」
  メディアでは、団塊世代に関するニュースも最近目立つようになってきたが、そのような状況の中で2月20日、独立行政法人労働政策研究・研修機構は、「『団塊の世代』の就業・生活ビジョン調査」を発表した。それによると、1947〜51年(昭和22〜26年)生まれのいわゆる「団塊の世代」の65.0%が、自身の職業能力を「若い人より上回っている」と認識している。また、6割以上の人は「自己の技能や技術を後継者に伝えるべき」と考えているにもかかわらず、「うまく伝わっている」という人は4.9%に過ぎず、65.5%が「ある程度伝わっている」という段階にとどまっており、今後の会社側のサポートが求められるところであるといえる。
●  技能伝達できない理由は、「伝える相手がそもそもいない」
  自己の技能や技術を後継者に伝えるべきと思っている人は、雇用者計で64.4%となっており、多くの人が技能の伝達の必要性を感じていることは確かである。仕事の内容別にみると、「専門・技術的な仕事」(77.5%)や「管理的な仕事」(77.4%)では4分の3を超えている。技能伝達ができていない理由としては、男女計では「伝える相手がそもそもいない」が42.0%と最も多く、次いで「会社のサポートが足りない」(27.1%)、「時間が足りない」(23.9%)、「会社が伝達の機会を与えてくれない」(17.2%)などとなっており、会社側の努力だけではどうしようもない物理的な問題もたくさんある。
  また「技能を伝える相手がそもそもいない」と答えた人は、企業規模別にみると、30 人未満の小規模企業でとりわけ多くなっている点が特徴的である。また仕事別にみると販売の仕事では、教えた相手がすぐに辞めてしまったと答えた割合が非常に多かった。
●  所得を伴う仕事は、「65歳まで」の割合がもっとも高い
  「団塊の世代」の人々が何歳くらいまで所得を伴う仕事をしたいと考えているかをみると、本人調査計で65歳が42.5%ともっとも多く、次いで70歳が23.9%となっている。総じて65歳とする人と70歳とする人とに大きく2分され、雇用者(65歳:46.1%/70歳:19.8%)は相対的に65歳派が多く、一方、自営業主(同26.7%/41.8%)は70歳派の方が多い。
  60歳以上において就業する際の夫の動機をみると、本人調査計でみて、「収入を得るため」が77.8%でもっとも多く、次いで「健康や体力を維持するため」、「自分の知識や能力を活かすため」、「働くのが当たり前だから」と続いている。一方、妻が夫に就業を希望する動機は、ほぼ上位は夫と同様な結果となったが、「ゴロゴロと家にいて欲しくないから」という理由を36.8%の人が挙げていた。
  65歳までの雇用確保措置の導入が事業主の義務となり、団塊世代の労働者も今後65歳まで働くのが当たり前の時代になろうとしている。しかしながらいくら本人が希望しても収入や仕事内容、雇用形態などが本人の希望通りになるとは限らない。就業する目的としては、収入を得ることが第一の目的であっても、同時に積極的に若い後継者に技能を伝達しようとする気持ちも忘れずに仕事に取り組んでもらえれば、技能の伝達不足も少しは解消されるのではないだろうか。
出所:独立行政法人 労働政策研究・研修機構 「『団塊の世代』の就業・生活ビジョン調査」
(http://www.jil.go.jp/press/documents/20070220.pdf)
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.02.26
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