>  今週のトピックス >  No.1394
還付申告における医療費控除の留意点
●  未払いの治療費は医療費控除の対象外
  2006年分所得税の確定申告が始まっている。給与所得者で1年間の給与収入が2,000万円以下の人は通常、年末調整が行われるので確定申告をする必要はないが、雑損控除や医療費控除、中途退職者で年末調整をされなかった人は、確定申告をすれば源泉徴収された税金が還付されるケースもある。
  還付申告の定番といえる医療費控除は、自分や自分と生計を一にする親族のために支払った医療費が一定額を超える場合に、最高200万円を限度に所得から控除されるが、申告に際してミスも少なくない。
  まず、注意したいのは、医療費控除の対象となる医療費の金額は、あくまでも「その年中に支払った金額に限られる」こと。医療費を、年をまたいで分割で支払った場合は、たとえその年中に治療が終わっていても、未払いとなっている医療費は対象とはされない。例えば、総額40万円の治療費を、昨年25万円、今年15万円支払った場合、今年の確定申告では25万円のみが対象で、15万円は来年分の医療費控除の対象となる。
●  クレジットや借入金で支払っても医療費を支払った年分の対象
  一方で、最近では、医療費をクレジットカードで支払ったり、医療費が高額だったことから借入金で支払ったりするケースも少なくない。こうしたケースでクレジットの引き落としや借入金の返済が翌年になった場合、その年に支払った医療費と考えず、クレジットが引き落とされた年や借入金を全額返済した年の医療費に含めるというミスが多い。
  例えば、医療費をクレジットカードで支払い、その引き落としが翌年になった場合は、病院への治療費の支払いそのものは済んでおり、債務がクレジット会社に移行して、その時点では結果的に「ローン会社への返済金」とされることから、前年分の医療費控除の対象として認められる。同様に、借入金で支払い返済が翌年だった場合も、医療費の支払いは済んでいることから、医療費を支払った年分の対象となる。
●  補てん金などは対象となる医療費ごとに計算
  そのほかでは、保険の給付金や高額療養費などの補てん金の金額を差し引かずに、支払った医療費をそのまま全額申告し、後から税務署に指摘されるケースも少なくない。
  一方で注意したいのは、これら補てん金などを差し引く計算をする場合、たとえ支払った医療費の金額を上回る部分の補てん金などを受け取ったとしても、ほかの医療費の金額から差し引く必要はないということである。所得税法では、「計算の際にその補てんの対象とされる医療費ごとに計算を行うこと」とされている。
  例えば、昨年1年間に、盲腸で1週間入院治療したほか、風邪で内科医院や虫歯で歯科医院において治療を受けたケースで、生命保険契約に基づく入院給付金として入院治療費を超える金額の支払いを受けた場合、その超えた部分の金額を内科や歯科の治療費から差し引いて医療費控除の計算をする必要はないということである。
  なお、医療費控除の対象となる金額は、「(医療費の支払額−保険金などで補てんされる金額)−10万円(年間合計所得金額が200万円未満の人はその5%の金額)」で計算した金額(最高200万円)となる。
  還付金は、早めに申告すればそれだけ早く受け取れる。早めの確定申告を!
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.02.26
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