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保険会社のソルベンシー・マージン比率の見直し
●  10年ぶりの大幅な見直し
  金融庁は、財務の健全性を測定・評価するために96年の保険業法改正時に導入され、保険会社に適用されているソルベンシー・マージン(支払い余力)比率を見直し始めた。これは、大規模災害や株価暴落などの通常の予測を超えて発生するリスクに対し、保険会社がどの程度の支払い余力を有しているかを示す指標である。比率が高いほど健全とされ、現行の運用では200%を下回れば金融庁が是正命令を出すこととなっている。
  従来も適時必要に応じて見直されてきたが、今回の見直しの理由は、保険会社の財務体質の強化やリスク管理の高度化を図る観点から、(1)現下の金融市場実勢と乖離したものとなっていないか精査する必要があること、(2)近年の保険商品の多様化、資産運用技術の発展、リスク管理手法の高度化などによる実態を踏まえるとともに、(3)現在、議論されている国際会計基準などにおける保険負債の時価評価をめぐる動向も見極める必要があることである。改正施行は2007年中を目指す。
●  各社ごとに異なる基準も
  見直し内容は、株式の価格変動リスクなどの計算方法を従来以上にきめ細かくすることなどである。議論の柱となりそうなのがリスクの算出に用いる数値基準の改定である。現行ルールでは株式の価格変動リスクはその時価総額の10%としているが、こうした数値が妥当か検討する。
  またリスク管理の能力が高い保険会社には独自の基準作りも容認する方向とされている。優れたリスク管理手法を持つ保険会社には、一律の基準でなく会社が算出したリスクの度合いを指標として取り込むことも検討する。一律基準よりソルベンシー・マージン比率が高くなる可能性もあり、高度なリスク管理への取り組みを促す。
  2006年11月から検討会が開始されており、2月中までに6回開催された。3月を目途に報告書を取りまとめる予定である。
●  生協系共済もソルベンシ―・マージン導入
  保険会社のソルベンシー・マージン比率見直しと歩調を合わせて、厚生労働省の生活協同組合制度の見直しに関する検討会も中間報告をまとめた。共済事業を契約者保護の観点から規制強化する。共済事業の財務指標にもソルベンシー・マージン比率を導入することとしている。財務の健全性を確保するため、最低限保有すべき出資金額(最低出資金)の基準も新たに設ける。
  2007年の通常国会に消費生活協同組合法の改正案が提出され、制定以来約60年ぶりに抜本改正されることになる。
出所:金融庁「ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チーム」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.03.05
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