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自社株贈与特例は年間500万円以上の贈与が必要
●  自社株贈与の特例の対象とならない“黄金株”
  2007年度税制改正法案は3月6日に衆院を通過、参院での審議が開始されている。同法案には、中小企業の事業承継を円滑化するため、相続時精算課税制度を拡充した特定非上場株式など贈与の特例が盛り込まれているが、年間贈与額の合計が500万円以上であることなどの適用要件の詳細が明らかになった。
  自社株贈与の特例は、2007年1月1日から2008年12月31日までの間に、中小オーナー経営者が、20歳以上の後継者である子どもに自社株式を贈与する場合、親である贈与者の年齢要件を60歳に引き下げ、非課税枠を500万円上乗せし3,000万円とするもの。
  改正法案によると、特例の対象となる非上場株式は「特定同族株式等」と定義され、(1)その年中に取得した特定同族株式などの合計額が500万円以上となること、(2)すでに住宅取得など資金に係る相続時清算課税制度の特例を受けている場合は自社株贈与の特例は適用できないことが分かった。
  また、特定同族株式などは「議決権の制限がないこと」という要件が付されたため、事業承継の円滑化の中で期待されている拒否権付き株式、いわゆる“黄金株”は、60歳以上65歳未満の親からの贈与には適用されないことになるので要注意だ。
●  確認日は選択年の翌月3月15日から4年経過日
  自社株贈与の特例は、贈与時点では発行済株式などの総額が20億円未満の会社が対象で、また、受贈者が代表者かつ株式など50%超保有となるなどの要件を、特例選択後4年経過時点で満たす必要がある。
  この4年後要件は、特例選択時において「確認日の翌日から2ヵ月以内に確認書(所轄の経済産業局長が発行するもの)を納税地の所轄税務署長に提出することが確実であると見込まれているとき」とされ、確認日は、選択年の翌年3月15日から4年経過する日と規定された。4年経過するまでに、贈与者が死亡した場合は死亡の日、法人が解散した場合などは政令で定める日が確認日となる。
●  父母双方からの同一自社株式の贈与の特例適用は不可
  また法案では、贈与者にも要件が付され、特例選択の最初の贈与の直前に、自社の、(1)代表者で、(2)発行済株式などの50%超を保有し、(3)議決権の50%超を有することという要件のすべてを満たすことが必要となる。
  このことから、相続時精算課税制度では父母両方からの贈与も認められるが、自社株贈与の特例では、父母双方から同一の自社株式を贈与される場合には必然的にどちらか一方の贈与にしか同特例の適用はないことになる。
  例えば、父が経営する会社の株式を父が60%、母が30%持っていたケースでは、父しか50%超という要件に該当しないため、母からの贈与は特例の対象とはならないことになる。ただし、65歳以上の母からの贈与であれば、従来の相続時精算課税制度(非課税枠2,500万円)を利用すれば負担なく贈与できよう。また、母が自社株を50%超保有する別会社を経営している場合であれば、その会社の株式の贈与は特例の対象となる。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.03.12
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