>  今週のトピックス >  No.1406
約7年が経過した国家公務員倫理法の効果は
●  公務員の倫理意識・信頼「向上せず」と5割超が回答
  旧大蔵省の不祥事に端を発して国家公務員と民間との付き合い方を定めた国家公務員倫理法・倫理規程は2000年4月に施行され約7年が経過したが、国家公務員の倫理意識は向上したのか。人事院の国家公務員倫理審査会が、市民モニターを対象に昨年11月に実施した「国家公務員倫理に関するアンケート調査」では、倫理法・倫理規程によって公務員の倫理意識が「向上した」と思っている市民は少ないことが分かった。
  調査結果(有効回答数472人)によると、公務員の倫理意識が向上したと「(ある程度)そう思う」との回答は37.3%にとどまり、「(あまり)そう思わない」との否定的な意見が58.0%と6割近くを占めた。
  また、公務員に対する信頼についても、「(大いに・ある程度)高まった」の37.5%に対し、「(まったく・あまり)高まらなかった」が55.9%と過半を占め、倫理法・倫理規程の効果に否定的な市民が多い結果となった。
●  香典・ゴルフ規制は5割超が「現行どおりでいい」と回答
  倫理規程では、仕事と関係のある民間人(利害関係者)から「金銭・物品の贈与」を受けることが禁止されており、私的な関係がある場合や親族の葬儀に際して通常の社会儀礼の範囲内など一定の場合を除き、香典を受け取ることも禁止されている。
  このような香典に関する規制については、「現行どおりでいい」との意見が54.4%を占め、「許可や届出があれば、認めていい」は12.1%、「一定額以下のものであれば、認めていい」は23.3%、「香典であればすべて認めていい」が2.3%だった。
  また、割り勘であっても利害関係者とのゴルフが禁止されている。これは、ゴルフが過去の不祥事件で過剰接待の典型的なものであったことから、仮に自己費用負担であっても、国民の疑惑や不信を招く恐れのあることを踏まえての規制だ。このことに対しても、「現行どおりでいい」との意見が59.7%を占め、「割り勘で許可や届出があれば認めていい」は20.1%、「割り勘であれば認めていい」は10.4%にとどまった。
●  倫理法の検証は利害関係者を対象に行うべき
  倫理法・倫理規程によって公務員が過剰に自己抑制しているとの指摘があるが、公務員が萎縮したと思うかとの質問では、「(ある程度)そう思う」は17.1%に過ぎず、「(あまり)そう思わない」が78.8%と大勢を占めた。一方、行政と民間企業などとの間の情報収集や意見交換などについては、倫理法によって「支障が生じた」との回答は1割強(14.7%)で、ほぼ8割(80.8%)は支障を感じていない。
  こうして見てくると、倫理法・倫理規定が導入されたことによる効果は、プラス面、マイナス面ともにあまり感じられないようだが、もっともそれは、今回の調査対象が、普段あまり国家公務員と接触しない市民モニターということもある。倫理規定の内容の認知度についても、「(よく・ある程度)知っていた」は45.1%で、「(全然・あまり)知らなかった」(54.6%)との回答の方が多かった。
  仮に回答者が、国家公務員と仕事上で関係のある本来の意味での利害関係者であれば違った結果になっていたと思われる。税務の世界でいえば、国税職員と、納税協力団体の人々や税理士などの関係は、倫理法導入後、ややぎくしゃくした雰囲気や情報交換などで支障が見られることは否めない。倫理法の検証は、利害関係者を対象に実施し、見直すべきところは見直すべきだと思われるが、いかがだろうか…。
参考文献:人事院国家公務員倫理審査会「平成18年度第2回「国家公務員に関するモニター」アンケート調査結果」
(http://www.jinji.go.jp/kisya/0703/rinrikekka.htm)
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.03.19
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