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パートへの厚生年金適用拡大、企業の3割が「負担増えないよう時間設定」
●  パート・アルバイト比率が高い業種は、あくまでも労働時間の調整で対応へ
  (株)アイデム 人と仕事研究所 は3月2日、事業所の採用・雇用管理担当者を対象にインターネット上で実施した「パート・アルバイト雇用調査」の結果を発表した。その結果によると週20時間以上働くパート・アルバイトに厚生年金保険の適用が拡大された場合には、「特に対応策はとらない」が35.1%、「保険料負担が増えないよう、パート・アルバイトの労働時間を週20時間未満に設定する」が31.1%と拮抗している。
  また「保険料負担が増えるなら、現状のパート・アルバイト雇用を派遣や請負などの外部戦力に転換する」15.9%、「保険料負担が増えるなら、現状雇用しているパート・アルバイトを正社員に登用する」11.4%、「保険料負担が増えるなら、現状のパート・アルバイト雇用を正社員雇用に転換する」4.5%の順になっている。またパート・アルバイト比率が高い業種については、「保険料が増えないよう、パート・アルバイトの労働時間を週20時間未満に設定する」と回答しているケースが多い。特にビル管理・警備業や飲食店、宿泊業、小売業は、あくまでも労働時間の調整で対応していこうというスタンスのようである。
●  2010年よりパートタイマーにも厚生年金の適用拡大か?
  政府は3月13日、パート労働者への厚生年金適用を拡大する案を与党年金制度改革協議会に示し、今月末にも関連法案を国会に提出する予定であるが、今国会での成立は日程的に不可能なので、秋以降になるものと予想される。パートへの厚生年金適用拡大は、安倍首相の「再チャレンジ」支援策の柱となっているが、流通・小売業界などをはじめとする経済界の反発は大きい。これまでも過去何度も議論をしてきたところであり、見送りされてきた経緯があったが、今回は実際に国会提出まで進みそうである。
  厚生労働省がまとめた政府案によると、適用する基準は現行の「週30時間以上の労働」を「週20時間」に緩める。一方で、新たに「月額9万8,000円の賃金」と「1年以上の勤務期間」という条件を設け、さらに従業員300人以下の中小企業には適用を3年ほど猶予する考えのようである。また健康保険と介護保険も同様の基準で適用を拡大するとしている。
  保険料の負担が急激に増加することに対して反発している経済界に配慮して、2010年1月以降に施行の予定である。
  今回は、厚生年金保険が適用拡大されたらという上記アンケートに対しての調査結果について各企業側の回答は、政府や政治家も大変参考にしていることは間違いない。
  しかしながら300人以下の中小企業だけが3年猶予されるのは、平等でないという不満の声も大手企業からはあがっている。経済界を意識して、1年以上の勤務期間などの条件も設定している点は理解できるが、実際は骨抜きの改革にならないか不安も残っている。いずれにしても将来、週20時間以上勤務するパートタイマーにも厚生年金が実際に適用になった際に、企業側の対応により不利益を被る労働者が出ないことを願うばかりである。
出所: アイデム 人と仕事研究所 「パート・アルバイト雇用調査」
(http://workium.aidem.co.jp/enquete/pdf/2007/investigation_part_arbeit.pdf)
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.03.26
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