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日銀利上げも長期金利上がらず、景気・物価に「?」
●  長期金利1年1カ月ぶりの低さ
  日銀が2月に利上げに踏み切って以降、上昇するとみられていた長期金利が低水準のまま推移している。代表的な指標である新発十年物国債利回りは3月22日、1.545%に低下し2006年2月以来、1年1カ月ぶりの低水準となった。住宅ローンを借りている人、借りようと思っている人にとっては、金利がなかなか上がらないことは朗報だが、金利が低いままだと預貯金のメリットは薄れたままだ。
  そもそも長期金利とは、返済期間の長い債券や満期までの期間が長い金融資産の利回りのことを指す。返済期間が1年未満のものの金利を短期金利、1年以上のものを長期金利という。一般に新聞などで経済指標として使われる「長期金利」は十年物国債の金利(利回り)を指すことが多い。
●  インフレだと金利は上がる
  短期金利の代表は「無担保コール翌日物金利」だ。金融機関は短期資金が必要な場合、銀行間同士でお金を貸し借りするコール市場を利用する。無担保コール翌日物はコール市場で銀行同士が無担保で貸し借りする翌日返済の短期資金の金利だ。日銀は2月21日の金融政策決定会合で、誘導目標を年0.25%から0.5%に引き上げた。これが「利上げ」だ。
  日銀が誘導する短期金利とやや異なり、長期金利は金融政策の影響を受けつつも、将来のインフレ期待や景気の見通しなどが反映される。
  例えば景気が良くなると消費が活発になり、商品やサービスの買い手が増え、物価は上昇する。物価が上昇する(インフレ)と、お金が多く使われるので、金融機関はお金の流出を防ぐために、金利を高くして貸し出しを抑制する。こうして長期金利は徐々に上がっていく。逆に物価が低いまま(デフレ)だと、お金はあまり使われず、金融機関は貸し出しを増やそうと金利を下げ、長期金利は下がっていく。
●  日銀と市場の温度差
  今回の利上げは日銀が昨年3月に量的緩和政策を解除して以来2度目。日銀は景気の過熱や物価の上昇を見込み、ブレーキをかけるために利上げをした。本来なら短期金利の上昇に合わせて、長期金利も緩やかに上昇していくはずだ。ところが日銀の政策に逆行する形で長期金利が下がっている。これは何を意味するのだろうか。
  市場参加者や専門家のなかには消費者物価指数がマイナスになることを予想する声が多い。株式相場が乱高下するなど経済情勢は世界的に不透明感が増しており、米国の景気にも減速感が出ている。日銀は景気の過熱や物価の上昇を想定しているが、世の中の多くの人はそう見ていない。それが長期金利の低下に現れているのだろう。
2007.04.02
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