>  今週のトピックス >  No.1417
無業者で過去1年間に職業能力開発を行ったものは、2割弱にとどまる
●  無業者の職業能力開発は、就職希望者でも3割の取り組み
  独立行政法人労働政策研究・研修機構が行なった「就業・社会参加に関する調査」によると、就業者の半数弱は過去1年間に自己啓発を実施している一方、収入のある仕事を全くしなかった無業者は、2割弱しか職業能力開発を行なっていないことが分かった。
  この調査は、就業と生活、社会活動の状況などを把握するための基礎的調査を目的として、2006年12月〜2007年1月に全国の満20歳以上65歳以下の男女4,000人を対象にアンケートを実施し、2,274人から回答が得られた。
  無業者で職業能力開発を行なった内訳を年齢別でみると、20代が一番多く4割弱を占め、次に30代が続いている。また、就業希望者で職業能力開発を行なったのは3割弱と低い割合となっている。無業者の増加は、労働力人口の低下している今、大きな問題であり、政府も「再チャレンジ政策」の中で総合雇用対策を行い、いかに無業者を就職させるかに力を入れて取り組んでいるところである。今回の調査は、無業者の実情を反映する結果となっており、なかなか興味深いデータといえるのではないだろうか。
●  金銭面での支援が不可欠
  詳細を見てみると、無業者のうち、職業能力開発を行なった者の中で、「就職やキャリアアップに備えて」と答えた割合(44.4%)が、「資格取得のため」と答えた割合(31.3%)を押さえて最も多くなっており、仕事に生かしたいと前向きに考えていることが分かった。
  また、職業能力開発を行なった者に、職業能力開発を行う上で問題となることを聞いたところ、「お金がない」ことを理由として挙げる割合(34.3%)が最も多く、次に、「自分の求める内容の勉強の機会がない」(30.3%)などの順となった。特に、「お金がない」という回答は、職業能力開発を行わなかった者でも3割弱(27.3%)が挙げており、金銭面での援助や職業能力開発に関する受講料の引き下げなどが必要であるようだ。実際、職業能力開発を行う上で、行政からの支援で不十分だと思うものを聞いたところ、「受講料等の金銭的援助」(24.2%)、「税制面での優遇措置」(18.2%)、「研修や講座の開設」(18.2%)などが挙がっており、職業能力開発に対する支援希望は、研修や講座の受講負担の軽減に関連するものとなっている。
●  総合的な取り組みによる無業者の負担軽減が必要
  職業能力開発を行わなかった者の理由では、「家事・育児・介護等が忙しくて時間がない」を挙げる割合(28.0%)が最も高くなっている。この結果から、無業者の中には、金銭面以外の理由で職業能力開発ができない者が多くいることが分かる。無業者自らが望む職に就けるよう、金銭面だけでなく、ホームヘルパーや育児、介護に関する制度の充実など、彼らが安心して能力開発に取り組めるような環境を整備してあげることも必要であろう。
出所:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「就業・社会参加に関する調査結果」結果報告
(http://www.jil.go.jp/press/documents/20070328.pdf)
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.04.09
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