>  今週のトピックス >  No.1422
親会社株式のみ交付の三角合併は課税を繰延べ
●  容易になった外国企業による日本企業の合併
  会社法の施行による2007年5月からの三角合併の解禁に伴い、2007年度税制改正において、合併などの対価として100%親会社の株式が交付される三角合併については、現行の組織再編税制の枠組みに沿って、資産の移転に伴う譲渡損益の課税の繰延べ、被合併法人などの株主における旧株の譲渡損益の課税の繰延べが可能となった。
  三角合併は、会社を合併する際、消滅会社の株主に対し、対価として、存続会社の株式でなく親会社の株式を交付して行う合併をいう。
  三角合併では、外国企業が日本現地法人(合併法人)と日本企業(被合併法人)を合併することにより、日本法人を傘下に収めることが可能になる。ただ、三角合併では、被合併法人(日本企業)の株主に対して外国企業の株式が交付されることになり、資産の移転により譲渡損益に対する課税が発生するが、対価が合併法人株式でないため、改正前は、法人税法上は非適格合併とされて課税の繰延べは認められなかった。
●  新たに生じる外国人株主に対する課税問題
  しかし、2007年度税制改正において、合併時に親会社の株式のみを交付する三角合併について課税の繰延べが可能とされた。ところが、新たに外国人株主に対する課税問題が生じる。外国人株主に対して外国企業の株式が交付された場合には、海外で流通する株式を外国法人や非居住者が取得することになり、将来株式の売却が行われたとしても、課税する機会はなくなってしまうことになる。
  そこで、三角合併などの組織再編において、わが国に課税権のある株式を有する非居住者などが外国親会社の株式の交付を受ける場合には、組織再編のときに旧株の譲渡益に対して課税することとされた。また、外国法人等株主が日本支店で保有する株式については、内国法人と同様に課税繰延べとし、その株式を日本支店から外国に移管した場合には親会社株式を譲渡したものとして課税することとされた。
●  組織再編成に伴う国際的な租税回避措置
  一方、三角合併に海外企業が関係すると、租税回避に利用される可能性がある。例えば、法人税率の低い軽課税国にある実体のないペーパーカンパニーを通じて内国法人やその子会社を所有する形態を作り出せば、外国子会社合算税制の適用を免れるなど、租税回避が容易になるという懸念がある。
  そこで、企業グループ内の法人間で合併など(軽課税国に所在する実体のない外国親会社の株式を対価とする場合に限る)が行われる場合において、合併法人などにも事業の実体が認められないときは、その合併などのときに株主の旧株の譲渡益に課税する。
  また、内国法人(少数の株主グループによって80%以上の持分保有があるものに限る)の株主が組織再編成により軽課税国に所在する実体のない外国法人を通じてその内国法人を支配(80%以上の持分保有)することになった場合には、その外国法人やその外国法人に係る外国子会社(軽課税国に所在する実体のない外国子会社に限る)に留保した所得を、その持分割合に応じて、その外国法人の株主である居住者や内国法人の所得に合算して課税する。
  こうした組織再編成に伴う国際的な租税回避を防止するための措置は、2007年10月1日以後に行われる合併などについて適用される。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.04.16
前のページにもどる
ページトップへ