>  今週のトピックス >  No.1425
若年者雇用対策は、マッチング機能の強化が必要
●  労働力人口の減少には、政府と企業の相互連携、補完で対応
  日本経団連は4月17日、「官民協力による若年者雇用対策の充実について」と題する提言を発表した。大きく分けて、若年者の雇用対策の充実にむけた企業の自主的な取り組みと政府による対策の2つについてまとめられている。その中でも特に労働市場におけるマッチング機能の強化(ハローワークの見直し・機能強化、民間のマッチング機能の有効活用)を強く求めており、今後の動きに注目したいところである。
  就職氷河期に思うように就職できなかった年長フリーターが約90 万人おり、その固定化はわが国の経済成長にとって阻害要因となってしまう。意欲と能力がある若年者の就労を促進し、全員参加型社会の実現につなげていければと思うのは当然である。
  雇用失業情勢には改善が見られるものの、長期失業者数は高い水準で推移しており、また、若年者の完全失業率も高水準にある。今後、労働力人口の減少が見込まれる中、意欲と能力のある若年者が、それに応じた就労の機会を得られるようにするためにも労働市場のマッチング機能を高めることは早急に求められているが、結局のところは企業による自主的な取り組みと政府によるさまざまな取り組みを相互に連携、補完させながら進めていくことが必要となるのではないだろうか。
●  正社員への登用制度やトライアル雇用制度の活用を推進すべき
  若年者雇用対策を推進し、また、労働市場の改革を促進するためには、企業の採用のあり方、処遇制度などを、それぞれの企業の実情に即して自主的に見直していかなければならない。その中でもいわゆる正社員登用制度については、すぐにでも改革ができる部分であると思われる。意欲と能力があり、企業と本人のニーズが合致する者に対しては、仕事・役割・貢献度と処遇を整合させることがお互いにとってもプラスになる。
  今後の労働力不足時代に、正社員を確保しようとしている動きがさまざまな業界で進んでおり、パートやアルバイトといった有期雇用契約者から期間の定めのない雇用契約者(いわゆる正社員)への登用の仕組みも、徐々にできあがってきている。
  企業は、経験不足などにより就職が困難である求職者の適性や能力を見極め、求める人材を確保するために、トライアル雇用制度などを活用していくべきである。その活用促進のために、政府は、トライアル雇用の実施期間を現行の原則3カ月から1年程度に延長することを提言するなど、より適切に求職者の適性や能力を判断できるような仕組みとする必要がある。
●  ハローワークの見直しと強化が鍵
  ハローワークは、無料かつ全国的な職業紹介組織を維持すると同時に、現在問題となっている「就職氷河期」にやむを得ずフリーターとなった、年長対象者の一層の絞込みやサービスの重点化が必要である。またハローワークは国が維持すべき最低限の職業紹介機能の効率化を図りながら、職業紹介事業の民間開放を一層進めていくべきである。労働市場のマッチング機能を高めるため、民間のカバーする範囲を拡大し、官民が相互に補完しあうきめ細かいサービスの提供体制が構築されれば、若年者雇用対策にも資することとなる。
  その際には、単に市場化テストにより官業の一部を民間委託するだけでなく、ビジネスとして民間職業紹介事業が成り立ちうる範囲を広げるという視点も重要である。
  ハローワークに比べると実績ではかなり見劣りするが、官民が補完しあって労働市場のマッチング機能を強化するためにも、民間職業紹介機関をこれまで以上に活用すべきであるという意見も多い。しかしながら中心となるのはやはり政府側の対策としてはハローワークの見直しと強化であり、より活性化するためにその都度利用者などから意見を取り入れる柔軟性も必要ではないだろうか。
出所:社団法人 経済団体連合会 官民協力による若年者雇用対策の充実について
−労働市場のマッチング機能強化に向けて−
(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/030.pdf)
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.04.23
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