>  今週のトピックス >  No.1433
新入社員と上司・先輩の「期待像」に大きなギャップ
●  意識のギャップが大きい新入社員と上司・先輩
  社団法人 日本能率協会が行った「2007年度 新入社員『会社や社会に対する意識調査』」によると、新入社員が描く上司・先輩の“理想像”と“実像”に大きなギャップがあることが分かった。
  今回の調査では、2007年度入社の新入社員だけではなく、上司・先輩にも初めて意識調査を行い、新入社員との意識のギャップを聞いている。また、バブル期入社組(1989年)、就職氷河期入社組(2000年)と今年入社組の3世代を比較し、環境変化による新入社員の意識の変遷についても調査しており、興味深い内容となっている。
  景気回復と団塊世代の退職に伴い、各企業は、採用に力を入れている。大卒求人においては、2008年に求人総数は、バブル期を上回り過去最大の93.3万人、求人倍率は1.89倍から2.14倍へと16年ぶりに2倍を超える調査結果も出ている。こうした中、新入社員が理想的だと思う上司・先輩像と、上司・先輩の自己評価による日頃の対応・指導の仕方に、大きなギャップが生じている現状は、今後検討していくべき課題の一つであるといえる。
●  今年の新入社員は、受け身的で守りの傾向
  調査結果を見ると、新入社員が望む上司・先輩像の上位は、「人間的魅力のある上司・先輩」(63.0%)、「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」(50.6%)であった。それに対して上司・先輩の指導の実態は、「仕事を任せて見守る上司・先輩」(48.0%)や「部下の意見・要望を傾聴する上司・先輩」 (36.0%)が上位を占めている。この結果から、新入社員は、仕事を任せてもらって主体的に行動したいという願望よりも人間的魅力を持つ上司・先輩に丁寧に指導してもらうことへの期待が強く、受け身の姿勢であることがうかがえる。
  一方、上司・先輩は、積極的に働きかけていくよりもむしろ、見守ることで新入社員が主体的に成長し「自ら学ぶ・行動する」ことを期待していることが推測され、両者の意識に大きなギャップが生じている。新入社員に「仕事や職場の悩みを相談したい相手」を尋ねると、「上司」(4.7%)と「社内の先輩」(24.8%)で約3割を占めており、会社での人間関係がまだ築かれていない新入社員でも、約3割は上司や先輩を相談相手として期待していることからも、いかにしてコミュニケーションを取りながらギャップを埋めていくかが新入社員の成長に大きく影響すると思われる。
  また、「実力主義」と「年功主義」の会社のどちらが魅力的かとの問いでは、2003年には「実力主義」73.5%、「年功主義」23.2%であったものが、今回の調査では、「実力主義」と「年功主義」がほぼ半々となっており、新入社員の競争を避ける傾向が強くなっている。この背景には、就職氷河期の先輩の姿や、リストラで苦しむ親の姿を目の当たりにしてきたことが挙げられ、実力主義よりもみんなが平等に上がっていく年功主義に魅力を感じるようである。
●  上司・先輩からの働きかけが必要
  新入社員が仕事をする上での不安については、「上司との人間関係」と「同じ職場の人たちとの人間関係」が前年と比べ上位となっている。メールや携帯電話でのやり取りが当たり前となったことにより、近年増加しているFace−to−Faceのコミュニケーションが苦手な新入社員は、人間関係のあり方に不安を抱えているようである。特に、今年の新入社員は受け身の傾向がある。上司や先輩は新入社員が相談にやってくるのを待つだけではなく、彼らの心情を察してフォローするような働きかけが必要であろう。新入社員の成長を実現するためには、考え方のギャップを埋め、上司・先輩が見守るだけでなく、手を差しのべてあげることが必要である。
出所:社団法人 日本能率協会 2007年度 新入社員「会社や社会に対する意識調査」結果
(http://www.jma.or.jp/release/data/pdf/20070419.pdf)
(庄司 英尚、株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所代表、社会保険労務士)
2007.05.07
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