>  今週のトピックス >  No.1434
明確化を図る執行役員就任に伴う退職手当の取り扱い
●  改正案を公表しパブリックコメントを募集
  国税庁は4月27日、使用人から執行役員への就任に伴い退職手当などとして支給される一時金の取り扱いの明確化を図るため、所得税基本通達などの一部改正案を公表し、同日から5月28日まで広くパブリックコメントを求めている。
  執行役員制度については、法令上にその設置の根拠がなく導入企業によって任意に制度設計ができることから、権限や義務の有無が必ずしも明確でないなどその法的な位置づけがばらばらとなっている状況にある。
  こうした中、国税庁は、これらの執行役員制度の導入企業において、使用人が執行役員に就任する際にその者に対し退職手当などとして一時金を支給するケースが見受けられることから、その一時金について、所得税基本通達の改正により退職所得として認められるものを例示し、取り扱いの明確化を図ることとしたものだ。
●  再雇用の保証なく役員に準じた報酬などが要件
  改正案によると、使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)からいわゆる執行役員に就任した者に対し、その就任前の勤務期間に係る退職手当などとして一時的に支払われる給与(その給与が支払われた後に支払われる退職手当などの計算上、その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われる給与に限る)のうち、例えば、次の要件のいずれにも該当する執行役員制度の下で支払われるものは、退職手当などに該当するとしている。
  要件は、(1)執行役員との契約は、委任契約またはこれに類するもの(雇用契約またはこれに類するものは含まない)であり、かつ、執行役員退任後の使用人としての再雇用が保証されているものではないこと、(2)執行役員に対する報酬、福利厚生、服務規律などは役員に準じたものであり、執行役員は、その任務に反する行為または執行役員に関する規程に反する行為により使用者に生じた損害について賠償責任を負うこと、である。
  ただし、この例示以外の執行役員制度の下で支払われるものであっても、個々の事例の内容から判断して、使用人から執行役員に就任したことについて、勤務関係の性質、内容、労働条件などにおいて重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係があると認められる場合には、退職手当などに該当することに留意する、としている。
●  損金算入が認められない未払金に計上した退職金
  そもそも、現実に退職はしていなくても、使用人が役員に昇格した場合などに退職金を支給するケースは少なくないが、役員退職給与は利益操作が行われやすいことから、税法では細部にわたって規定している。
  例えば、法人の使用人が役員に昇格した場合に、退職給与規程に基づき、使用人だった期間の退職金として支給したときは、その支給した事業年度の損金となる。使用人が役員に昇格したということは、会社との関係が雇用関係から委任関係となったことであり、使用人としての身分関係が終了した、すなわち退職したと考えられるからだ。ただし、未払金に計上した場合には損金算入は認められないので要注意だ。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.05.07
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