>  今週のトピックス >  No.1435
退職給付制度の現状
●  給与は退職金額に反映しない
  日本経団連では、隔年で退職金や年金の制度内容などを調査している。
  日本企業は長い期間をかけて、退職給付制度を見直してきた。見直しの理由は、(1)退職時の給与に比例する退職給付制度のままでは、勤続年数の長期化によって給与が上昇し退職給付額が高額になってしまう、(2)団塊の世代の大量退職が本格化すると、退職給付支払総額が膨らみ、「退職金倒産」の懸念が出てきた、(3)株価低迷と退職給付会計の導入を機に年金積立不足が財務体質を悪化させることになった、が挙げられる。
  こうした退職金の見直しが着実に進んでいることが今回の調査で裏付けられた。まず給与の上昇が退職給付額に反映する仕組みかどうかについては、67.7%が「給与の上昇は退職金額の算定基礎には反映しない」と回答している。2004年調査では53.5%、2002年調査では43.2%であり、昇給が退職給付額に反映しない仕組みづくりは着実に進んでいる。
●  年金と一時金の併用が主流
  反映しない仕組みとは、具体的には、ポイント方式または別テーブル方式である。ポイント方式は50.7%が導入している。また別テーブル方式は、11.0%となっている。別テーブル方式とは、給与算定のための賃金表とは別に退職金算定基礎額表を設けるものである。
  退職給付の支給形態は、「退職金と年金の併用」が74.6%で最多である。2004年は72.3%であった。「年金のみ」は13.1%。2004年は7.1%でありかなり増えている。逆に「退職金のみ」は13.5%から9.6%に減少している。
  採用している企業年金の種類は、適格年金が45.2%であり、いまだ2社に1社で残っている。確定給付企業年金は、44.9%と適格年金に匹敵する採用率となっている。確定給付企業年金と重複するがキャッシュバランスプランは24.0%である。確定拠出年金は30.4%とかなりの採用率を見せている。また厚生年金基金を実施している企業は16.3%もある。
●  適格年金廃止への未対応企業も多い
  適格年金は2012年3月末をもって制度廃止されるが、すでに適格年金を他の年金制度に切り替えた企業は38.9%である。切り替えた年金制度は確定給付企業年金であるのが67.2%で3社に2社、確定拠出年金は32.9%で3社に1社である。
  いまだ切り替えていない企業は61.1%であるが、そのうち切り替え予定があるのが半数の52.6%、予定がないのが45.7%とまだ方向性が決まっていない企業も多い。
出所:(社)日本経済団体連合会「2006年9月度 退職金・年金に関する実態調査」
(可児 俊信 ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長、千葉商科大学会計大学院教授、
CFP®、米国税理士、DCアドバイザー)
2007.05.14
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