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250%定率法は耐用年数2年の資産が1年償却可能
●  250%定率法は「定額法による償却率を2.5倍」
  周知のように、減価償却制度の抜本的改正によって今年4月以降に取得した減価償却資産については、償却可能限度額(取得価額の95%相当額)および残存価額が廃止され、耐用年数経過時点に「残存簿価1円」まで償却できるようになった。また、新しく導入された250%定率法では、取得当初の償却費の額が従来に比べて大幅に増加し、例えば、耐用年数が2年の減価償却資産では1年で償却する可能性がある。
  250%定率法は、文字どおり、定額法により計算した減価償却額を「2.5倍」した額の損金計上を認めるもの。つまり、「定額法による償却率(1/耐用年数)×250%」が償却率となる。
  例えば、耐用年数10年(定額法償却率0.1)の場合は、「0.1×2.5=0.25」が償却率となる。定率法では、この償却率を適用して償却した場合、限りなく1円(残存簿価)に近づくものの、現実的には永遠に続いていくことになる。
  そこで、これで計算した償却費が、残存年数(耐用年数から経過年数を控除した年数)内にそのときの帳簿価額を定額法で全額償却すると仮定して計算した償却額を下回るときに、均等償却(定額法)に切り替えて、残存簿価1円まで償却する。
●  償却率が1を超えた場合は「1」で頭打ち
  この250%定率法を使って償却した場合の初年度の償却率は、従来に比べ大幅に増加する。例えば耐用年数が2年の減価償却資産のケースでは、なんと1年目の償却率が1.25((1/2年)×250%)と1を超えてしまうことになる。もちろん、この場合、例えば100で買った資産の減価償却費を125計上できるわけではない。償却率が「1」を超える場合には、あくまでも「1」で頭打ちとなる。
  1年目で残存簿価1円まで全額償却できるわけだから、250%定率法の効果は明らかだ。ただし、実務的には、事業年度の中途で取得した場合、月割りで減価償却費を計上する必要があり、初年度に全額を償却できない場合もある。
  例えば、3月決算法人が期中の10月に取得価額100万円の資産を取得したケースでは、1年目の償却額は「100万円×1.0×6/12=50万円」となり、2年目の償却額は「(100−50)万円×1.0=50万円」となる。
  また、250%定率法は、今年4月1日以後に取得する資産から適用されるので、3月31日以前に取得した資産については、償却可能限度額(取得価額の95%相当額)に達した事業年度の翌事業年度から5年間で残存簿価1円まで均等償却することになる。ただし、この5年均等償却は2007年4月1日以後開始される事業年度から適用されるので、早くとも2008年3月期決算からの適用となるので注意が必要だ。
  ともあれ、制度見直しにより、経済産業省は、当初3年間で、損金算入額が約8億円増加し、約3億円(実効税率40%)のキャッシュフローが増加すると試算している。
  中小企業にとっても、制度見直しにより、見かけ上の利益は減少するが、外部借入に依存することなく自己資金で設備投資を行うことができるようになるため、減価償却費の増額は経営上好ましいと期待している。
(浅野 宗玄、税金ジャーナリスト、株式会社タックス・コム代表)
2007.05.14
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